2013年4月27日土曜日

【G1サミットまとめ3】三本目の矢 安倍政権が目指す成長戦略とは

はじめに

困惑することに、本家Globis.jpの方で、テキストレポートと動画が掲載され始めています。
3月23日に1つめの動画+テキストが掲載されたので、およそ自分がテキストレポートやろうと考えたときとほぼ同時です。早とちりと言いますか、本家で始まっていたのに気づかず。恥ずかしい限り。というわけで、ぜひそちらをご覧ください。(恨み節としては、一応Globisさんには確認のメール出してたんですが…)
http://www.globis.jp/2442

このまま尻切れトンボになるのも癪なので、本家とは違った形で何をやろうか、ということを考えて数週間経ってしまいました。動画を文字起こしするだけではなくて、なんらかの付加価値出さないといけない、という当然のことを強いられる環境になった意味では、改めてこれからが正念場ということで続けていきたく思います。まずはざっくりとセッションの解説、という体で走りながら、周りの意見を聞いて磨いていければと思います。どしどし改善提案お寄せください。

内容解説

このセッションの題名は、「三本目の矢 安倍政権が目指す成長戦略とは」となっていますが、実際、主に話していることは、「どうやったら抵抗抑えて改革進めるの?」という話です。G1サミットはいわゆる改革派の集まりなので、前提としてのやるべきことはわかってる(共有されてる)けど、他の集団の反対を超えてどう実行するの?」という話です。

登壇者の中では、秋山さんが「3本目の矢」を作る産業競争力会議の議員です。
秋山さん曰く、産業競争力会議も悪戦苦闘中で、例えばお金をつける、省庁の仕事を増やす政策に誘導される、ということです。

カーティス先生もおっしゃってましたが、平さんも1本目、2本目の矢は文句を言う人が少ないので簡単だけれども、3本目は政治的ハードルが高く、正念場であるという話をしてます。よく知られてる通り、労働、医療、農業などの改革は難しい。そうした問題に取り組むためにどうしたらいいのか?ということについての発言を抜き出してまとめとします。

実行するには?各パネリストの発言

政府の会議・メディア戦略で、総理がやりたいことを民間議員に言ってもらう「腹話術」が必要(フェルドマン)

政権発足時と選挙勝利直後、つまり今(当時2月)と参院選後に一挙に動きをつけることが必要(平)
↑一度失速して、参院選後にもう一度動きをつけることは可能なのか?(柳川)
↑野党時代と違い、衆議院で大勝して都市部・若手の議員が増えたので、進むはず(平)

実は国民が改革の必要性を感じてないから実行できないのでは?(柳川)
↑声を反映させるために、一票の格差問題を変えるところから(フェルドマン)

農業改革に当たって、JAと全ての農家を敵に回して行うのではなく、JAに参加しつつも現状に疑問を感じている人から変えていくのが良いのでは。(少しずつ切り崩していくということ)そのためにも通商政策。(平)

意思決定機構のあり方を変える必要性。女性を一定比率入れるアファーマティブアクションを取っていかないと変わらない。(秋山)
意思決定のインセンティブを考える必要性(フェルドマン)

規制改革後の絵をクリアに見せることが必要(柳川)
↑ビジョン、フレームワークを作り、政策目標と「国際先端テスト」を活用してKPIに落とし込んでいく。海外への伝わりやすさを考える(秋山)

官僚や農業団体との細かいところでの議論に勝てるスキル・専門性(柳川)

参考までに

1.パネリストのプロフィールは本家を見ればわかりますが、補足として平さんの「政務官」という役職とは、ということで、Wikipediaの解説を貼っておきます。

2.マクロ政策に関する経済財政諮問会議のホームページはこちら
ミクロ政策に関する産業競争力会議のホームページはこちら。議事次第・配布資料・議事要旨・記者会見要旨が上がってます。政権交代後の1月に始まって今日までに7回の会合があります。メンバーも実は三木谷さん竹中さん新浪さん、以外よく知られてないんじゃないでしょうか。他にもコマツの坂根さんなどがいますね。
ちなみに、他にも様々な課題について委員会が開かれてますがこちらで一覧が見られます。

3.フェルドマンさんが挙げられた、イノベーションを起こすために必要な7つのこと
1デフレ脱却
2税制改革(設備投資を増やすための)
3海外留学促進
4社会保障制度改革
5民主主義の質の改善(1票の格差を挙げられてますが、ネット選挙もその取組ですね)
6農業革命
7エネルギー(金が中近東に流れることを問題視)

4.フェルドマンさんが挙げられた、金融政策での4つの観点
1物価指数が総合指数でいいのか(エネルギー価格上昇を反映したものを物価上昇としてしまう恐れ)
2物価水準の目標設定(目標未達成でした、ごめんなさいまた来年、で済まないように)
3物価水準と物価目標の差から決めるマネーサプライルールの導入
4金融政策以外にも日銀総裁が発言すべき

5.念のため。KPIとはKey Performance Indicatorの略です。詳しくはこちら(KPMGホームページ)を。目標となる数値設定ですね。そこで間違った数字設定・間違った指標設定をするといろいろ歪んでしまうので使い方に気をつけなければいけないものです。

2013年4月24日水曜日

一番好きな本は?

「ルワンダ中央銀行総裁日記」
大学院に合格後、大学4年のときに読んだ本です。
一番好きな映画は?音楽は?という問いには答えられない自分ですが、本は?と問われたら確実にこの本を挙げます。自信を持って全ての人に勧めたいです。

きっかけは成毛眞さんの紹介を読んだことです。
『ルワンダ中央銀行総裁日記』−成毛眞ブログ
http://d.hatena.ne.jp/founder/20091202/1259762086

1965年-1971年のルワンダに、中央銀行総裁として着任した服部正也(Wikipedia)さんの話。
日本人初の世界銀行副総裁でもあります。日銀からIMFに出向、IMFからルワンダ中央銀行総裁として着任。日本では中央銀行総裁というと管掌が狭いように思われるようですが、経済の抜本的な立て直しを行っていきます。中央銀行総裁日記というと固いようですが、事実は小説よりも奇なり、ドラマがあります。

この記事を書き始めて気づきましたが、サイドバーのお気に入りブログに登録させていただいている「himaginaryの日記」、「本石町日記」でも紹介されていました。特に前者は極めてうまくまとまっており、是非リンクから読んでいただきたいです。そしてそこで紹介されているこの本に関するブログ記事も是非。「本石町日記」さんではルワンダのびっくりな状況、「ずんちゃか株式投資雑記帳」では服部正也氏のヒーロー的な活躍がよく書かれています。

これらを読んでいただければ本の魅力や読む必要性は十分に伝わると思うので、特に自分が何を書くか、というところですが、自分が好きな理由を3つにまとめて締めとしたいと思います。


1.異国で人と働く上での「人を見る目」
海外に一人で飛び込む中で人種年齢関係なく共に働く人をよく観察し、人物を公平に評価して周りの信頼できる人できない人を見極め、仕事を進めていく姿に、慣れない環境で恊働する上で「人を見る」ことの必要性が伝わります。「グローバルに働く」ことを説く本は数多あれ、実在した日本人が50年前のルワンダで範を示されていることに敬服です。
(黒木亮の「アジアの隼」「巨大投資銀行」「トップ・レフト」なども同じ意味で非常にエキサイティングで非常に好きな本ですが、フィクションとノンフィクションの違いがあります。)

2.知識・専門性の重要性
民情を的確に捉え、どのような手を打てばよいのかを考える観察力・洞察力から、差別意識・特権意識を持つ経済顧問団や外国資本など抵抗する勢力を振り切る、専門性・説得交渉力・実行力、それらは日銀・IMFで働いたプロフェッショナルとしての専門性が成せる技であり、大学院での勉強に大きなモチベーションになりました。

3.公益に関わる仕事の高潔さ
様々なアクターがいる中で、高所で差配する立場からルワンダの発展に尽くした姿が公共政策大学院に入る前でもあり、眩しく映りました。官庁なども省益に固執する姿などがありますが、服部さんの仕事ぶりには全体を、公益を考える仕事のすばらしさを見せつけられた気がします。

    

2013年4月22日月曜日

ソウルで韓国人と靖国問題について議論した

こちらソウル大学国際関係学院では、毎週月曜日にはJapan Tableといって、お昼ご飯を食べながら日本語で日本について議論する会があります。今日は日本人学生が3人と、韓国人学生10人ほどでした。

今日のテーマは、昨日麻生副総理が靖国参拝し、今日韓国外相が訪日を中止することを明らかにしたことから、靖国問題が取り上げられました。

参考:
韓国新政権初の韓日外相会談が取り消し…靖国参拝に反発(中央日報日本語版)
<靖国神社副総理参拝>韓国外相が訪日取りやめ(毎日新聞)
韓国外交賞が訪日中止、閣僚の靖国参拝に反発(読売新聞)
質問なるほドリ:首相はなぜ靖国参拝したいの?(毎日新聞)

以下にどんなことが話し合われたのかを9つにまとめてみます。

1.上記記事にあるように侵略戦争を肯定していることを理由とした反発はあるものの、日本側として参拝の意図がそういうわけではないと説明することは韓国人学生も理解していました。

2.その上で、韓国が靖国参拝に反発する別の理由として、「靖国神社には戦争中に亡くなった中国人・韓国人も合祀されており、その違和感と気持ち悪さがある、ほんとは別にしてほしい」という指摘があり、
分祀ができない2つの理由が説明されました。
1つは遺族感情。「A級戦犯は戦争犯罪者ではないが、多くの戦死者を出した戦争責任がある。一般戦没者と一緒に祭るのには抵抗がある」と上記記事で語られている一方で、A級戦犯の遺族は、A級戦犯だけ別に祀られるのは嫌だという気持ちがあること。
2つ目に、宗教上の理由。一度合祀した以上、魂は混然一体となり、一部のみを取り出して別に祀る、ということはできないこと。

3.「なぜ隣の千鳥ヶ淵戦没者墓苑には行かずに、靖国神社のみに行くのか、靖国ばかり行くのはおかしいのではないか」という指摘がありました。
千鳥ヶ淵のことについては知らなかったですが、墓苑の墓を1つ1つ回ることはできないから1つにまとめてある靖国神社に行くのではないか、また、最近安倍首相は硫黄島を訪問したが、恐らく現地の慰安施設にも訪問してるはずで、日本全国回ることは日程上無理でも、硫黄島などそういう場所に行けば慰安施設を訪れるはず、ということが説明されました。

4.「靖国神社」ということがあまりに大きな問題になっているので別の慰安施設は作れないのか、という指摘に対しては、
恐らく、靖国神社の抵抗や、根付いた靖国神社という場所から魂を移せるものなのかという懸念が出るであろうことが出ました。

5.「靖国神社に行くことのイメージを変え、平和への決意として参拝することを示すメッセージを出すべきだ」との指摘には、
「参拝した閣僚はそういったコメントを出すものの、メディア上で強調されないのではないか」という指摘がされました。

6.靖国神社内にある遊就館の展示内容が、広島の平和記念資料館と比べて明らかに戦争を肯定的に捉えている、という指摘がありました。

7.昭和天皇、今上天皇は参拝をしていないことに、閣僚が行くことの正当性を疑う声も上がりましたが(靖国参拝は1985年に中曽根総理が始めた)、
肯定派の人は「私人の信条に干渉するものではない」という意見があることも出ました。

8.麻生副総理の靖国参拝に対する韓国の反応については、「またか」という感じで、数年前よりも反応が薄くなっている、という指摘がありました。数年前なら「靖国神社」が検索ワードでトップになっていたものが、今回はトップ10にも入っていないそうです。またそれが日本の狙いだろうという話にもなりました。

9.最後に、時間が経って安倍や麻生などの保守的政治家が政界からいなくなり、今の若い人が政界で重要な立場になれば誰も靖国に行かなくなり、問題解決するのではないかという意見がありました。
しかし、靖国参拝に意欲的だった小泉純一郎の息子である小泉進次郎が政界で若手のホープとしていることで、彼の信条はわからないが、時間による解決ができないかもしれないことも指摘されました。

【追記】以下は友人のコメントです。

どこまで掘り下げる(普遍的な論点に移していく)かだと思います。
僕が知っている範囲で一般的に言われる論点は、ブログで全て出ていると思いました。
最近の新聞各紙の論調を見ていると、ひょっとしたら対米関係にも目を向けると、日米韓で目指すべきソリューションの方向性が見えてくるのかもしれません。合理論でしか議論ができなくなる危険がありますが。あえて合理論で割り切るとしたら、日中韓で見てみるのも面白いと思います。(一回やったことがあるのですが面白かったです)
知ってる限りですと、もう一段掘り下げると、
・第二次大戦の評価(善悪)を下すのはだれか問題
→「近代の超克」(西洋列強文明追従からの脱却)であった戦争の側面を考えると、靖国に参拝し続けることは西洋諸国に対しての一種の意思表示になりうる、という主張。ただ、韓国の方にはちょっと「しっくりこない」論点だとは思います。
・罪は償われているのでは?問題
→一応、death by hangingによって「平和に対する罪」は償われているはずです。未だに罪を問うのであれば、どの期間で罪を問うのかの議論が必要です。
・帝国臣民問題
→当時、中韓は大日本帝国でした。植民地ではありません。立派な「本土」です。法学的に見れば、戦没者は帝国臣民として亡くなったはずです。(1910年の条約が正当か否かでモメそうですが)
もう二段掘り下げると
・国家形成(ネーション形成)における靖国の位置
→ネーション形成の根拠となる無名戦士の墓として存在する靖国神社であって、第二次世界大戦だけのマターではない。
・政教分離は本来的に不可能
→政教分離は、権力の二重状態を解消して国家を主権国家化するためのものです。したがって、主権が一極に集中していれば問題がないはずで、国民が主権を持っている状態では問題は発生しようもないはずです。その上で、国民を形成する際に用いられているのが靖国神社なので本来的に靖国から離れた政治は実行不可能です。
の5論点が出てくるようですが、ランチミーティングであるとのことなので必要ないかと思います。
あと、これは個人的なお願いなのですが、東条英機の処刑後について、是非参加者の方にお伝え頂ければなー、なんて思ったりしました。
東条英機の処刑は極秘裏に実行され、遺体は焼かれた後粉々になるまで米兵によってスコップで叩き潰され、その遺骨は余すことなく海へ「廃棄」されました。(オサマビンラディンの処理方法は東条の処理をベースにしたようですね)
キリスト教にせよ、仏教にせよ、イスラーム教にせよ、憑代が無くては、人物を聖化することはできません。その意味で、東条を聖化することは我々にはそもそも不可能です。そこの認識がひょっとしたらズレているのかもしれません。

2013年4月21日日曜日

大学生活7年間で感じる学生の変化

今日はやや趣向を変えて、柔らかく「学生の変化」について書いてみます。

自分は2007年に大学に入学し、4月で大学生活7年目です(大学4年+大学院3年目)。
自分が大学入ったころ(2000年代後半)に周りの学生が認識していた「活動的学生の活動」と、いまの大学生(2010年代前半)の認識では違いがあり、それは社会の変化とも相関があるように思います。

「活動的学生の活動」というとやや変な感じですが、「学生のイケてる活動、と認識されていた行動」「意識の高い学生の活動」「意欲のある学生の活動」あたりの意味を入れています。どう表現しようか迷いました。

肌で感じることについて、エッセイ的に主観で書いてみたいと思います。

活動的学生の活動 〜2000年代後半

思えば、2007年に入学したときは「ITベンチャー」の熱気が残っていたと思います。

IT業界の風雲児として一世を風靡した堀江貴文さんは、
2004年 大阪近鉄バファローズ買収騒動
2005年 ニッポン放送買収騒動、衆議院選挙立候補
2006年 東京地検特捜部による家宅捜索
(2011年 実刑判決確定)
というタイムラインを過ごしています。


その熱気は学生の活動にも影響があって、
例えば東大の起業サークル、TNKは2005年に設立されました。

実際に起業した人で言えば、学生の間ではヴォラーレ(2007年創業)の高橋飛翔さんホットティー(2006年創業)の保手濱彰人さん、あたりが有名で、一定のロールモデルになっていたと思います。現在の一番の有名どころだと、リブセンス(2006年創業)の村上太一さんだと思います。

さらに学生の間では「ITベンチャーでインターン」をしてる学生はちょっとすごいんじゃないか、とか、「起業じゃなくてもサークルを立ち上げる」「イベントを起こす」というのがスーフリ事件の逆風はありつつも流行だったように思います。相対的に。


就活の時も、超優秀な学生は「外資系投資銀行」か「外資系コンサル」か「ITベンチャー」か「P&G」に行く、というような空気があったように思います。


ライブドアの堀江さん、サイバーエージェントの藤田さんが当時まとっていた空気と同じように、「とにかくデカくなってやる」、そのためには「とりあえず」だけれども、可能性のあるITベンチャーで勝負する、という選択肢を取る、取りたがる、学生が多かった、空気があった、ように思います。


活動的学生の活動 〜2010年代前半

「社会貢献」「グローバル」色の強い活動が増えてきたように思います。
代表例を挙げると、2009年にGCMPを設立し、2010年にe-educationを始めた税所篤快くんの活動や、Teach for JapanTable for TwoなどのNPOが本格的に注目されてきたのもこの頃ではないかなと思います。

加えて、留学熱が上がっているように思います。ベンチャーでインターンした、学生団体立ち上げた、学生がすごい、というよりは、ベンチャーで何をしてるのか、学生団体は何を目的として何をやってるのか、がより問われてきていると思います。そして、留学・成績・英語のスコアなどより目に見えるものを証明として追っている、そんな気がします。その意味で言えば、「真面目」に映るかもしれません。

就活の現場はいまいちわかってませんが、リーマンショックを受けて外資系投資銀行の人気は相対的に下がり、ITベンチャーへの熱気も相対的に下がっていて、商社一極集中、という感じではないでしょうか。

同じく、「起業」に対する認識も変わってきていて、「IT系×ベンチャー」から「社会貢献×活動の器の形は問わない」という形に変化していると思います。

2013年4月17日水曜日

日本の政治と外交はどこに向かっているのか?〜コロンビア大カーティス教授講演

金曜日にソウル大学国際関係大学院で、「日本の政治と外交はどこに向かっているのか?」という講演会がありました。

3部構成で、
1部:日本政治研究の大家であるコロンビア大学ジェラルド・カーティス教授の講演
2部:カーティス教授、ソウル大のパクチョルヒ先生、元朝日新聞主筆の若宮啓文氏によるディスカッション
3部:会場との自由討論
でした。

ちなみにカーティス教授はパクチョルヒ先生がコロンビア大学に留学していたときの指導教官で、驚くべきことに講演会は全て日本語で行われました。
「朝日新聞」「ソウル」という名前が入るとどうしても左なんじゃないかと思われる節がありますが、議論は面白いものでした。

1部・カーティス教授の講演

「安倍政権はどこに向かうのか?外交はどう変わるのか?」という大きなテーマです。
ほぼ、日本人は知ってる内容だと思いますが、改めてまとめてみます。

安倍政権発足から100日経った。1st hundred daysと言われ、国民に方向性を見せるために思い切り走るものだが、ここまでお見事としか言い様がない。私はこれまで元気をつけなきゃいけないと言ってきたが、安倍さんは強い日本と言っている。アベノミクスで明るい将来があることを多くの人が信じている。国内が前向きになっているだけでなく、海外投資家も日本に注目し、株が上がり、円が下がり、人気が上がっている。
6年前に1年間やった人とほんとに同じかと思う。前回は「美しい国」を唱えて、抽象的で国民には我々の生活との関係はあるのかと思わせてしまった。まさに安倍さんは失敗は成功のもとを具現化している。「美しい国」は使わずに、反省して学んでいる。
アベノミクスもわかりやすい。「三本の矢」。財政政策、インフレターゲット、成長戦略。新しく聞こえる。12月の総選挙のときには自民党が政権とれ、安倍が総理になれというわけでじはなく、3年間のチャンスを逃し続けた民主党を追い出したかった空気があった。投票率は低く、民主でないなら自民しかなかった。しかし現在は70%の支持がある。

3本の矢。1つめは財政政策。12月の総選挙を受けて、2012年度、2013年3月までの予算に補正予算を組み、追加的に10兆円投入した。そのうち6兆円が公共事業。財政刺激で成長率を短期的に上げる。理由は2つ。どうしても7月の参院選に勝ちたい。10月には消費税増税について確認し、上げるかどうかの決定をする。成長率なかったら上げられない。安倍さんは野田さんに感謝するべき。自民党が元々出していた、国民受けの悪い増税案を代わりにやって、批判を代わりに受けた。ただこれは新しいものではない。成長率は上がるが、すぐ下がる。GNP比200%の赤字があるので本来的には正しくないが、今は必要かもしれない。持続可能な成長につなげるためのつなぎ。

新しいのはインフレターゲット2%。マーケットにも大きな影響があった。デフレだと、来年買うのも今年買うのも変わらないが、インフレだと今年買わないと来年高くなる、ということで投資や消費を刺激するという根拠。実体経済に影響はないが、マインドは変わっている。ただ、実体経済が変わらないとアベノミクス意味がない。逆に赤字が増えてDisasterになる。マスコミはあまり取り上げないが。財政・金融政策の最初2本の矢で時間を稼いで、3本目をやらなければならない。物価上昇率については、食料品・エネルギーの輸入品の値段が上がってインフレと判断するのは早計で、賃金が上がらなければ意味がないので賃金に近いものを物価指数として使うべき。また、安くお金が借りられても貸す相手がいないという議論もある。企業が海外で投資する可能性は大いにある。

3本目。構造改革は時間かかるもの。明日から、はいできました、というものではない。これは産業競争力会議が議論している。ローソンの新浪さん、楽天の三木谷さん、武田の長谷川さん、竹中さんなどがいる。この前産業競争力会議のメンバーの一人と食事したら、その人は怒り狂っていた。メンバー10人のやりたいことが違う。経産省がまとまらないように議論を誘導する。結局安倍のリーダーシップがないと結論でない可能性がある。抵抗勢力が絡んでいろんなことを一度にやろうとしても無理なので、3つか4つに選んでやればいい。

参院選後の内閣改造をやったらアベノミクスは終わる。1年半、2年はやらせないと、「大臣はお客様」のまま。Yes! Minister!検討中です!と言ってれば大臣が代わって何も進まない状況を打破しないといけない。大臣の1人と食事して、大臣を長くやれ、と言ったら、その代議士曰く「長くやるかは安倍さん次第」「この前の選挙で大勝ちしたから、大臣になりたい人が順番待ちをしている。代わらないと不満が出る」ということで、どれほど日本政治が変わるかはクエスチョンマーク。

なぜいま自民党がこうしたことをやっているのか。3年前に野党転落、下野してショック。JA、医師会の支持があってもダメだった。彼らの言うことを聞いてもダメということでTPPに踏み切ろうとしている。参院選後に決めるものだろうと思ってたら、前に決めるようだ。アンケートを見ても、過半数の日本人は支持するだろう。日本の社会は変わった。集票マシンが昔のように機能しない。

では、What is to worry about?
1つ目は三本目の矢を撃つか。これはもう話したので省略。2つ目に外交問題。3つ目に参院選後の憲法改正。

外交問題について。NY Timesは右派に属する安倍が総理になってすぐ、批判の記事を出した。アメリカでも大きな関心があり、従軍慰安婦問題について「強制ではなかった」と発言したときは批判がおきたし、ヒラリークリントンは"sexual slavery"という単語を使えと命令した。いまのところ安倍さんは慎重。タカではあるが、慎重なタカ。Pragmaticな頭を持っている。オバマが大統領になってから麻生鳩山菅野田安倍と変わってきたが、安倍が長期になりそうなことで、どういう人かみてみたい、という関心がある。

日米首脳会談で3つの安心感があった。
1つ目はTPP。安倍は国民に嘘つきと思われず、だましてやるのはよくないので早くやると言った。2つ目は普天間。橋本政権から協議してきた問題について、民主党政権を経て、安倍はやると言った。辺野古への移設。うまくいくかはまだ見守る必要あるが。3つ目に中国に挑発的なことを言わなかった。これはアメリカを困らせない。
なお、安倍やマスコミは「日米同盟が完全に復活」と言ったが、そもそも危機的な状況にはなっていなかった。日米関係は根深く、簡単に崩れるものではない。

対中国外交については、慎重にやっている。戦略的互恵関係の話。尖閣については係争中であることを認めて、国際的なPRをやったらどうか。現状、中国だけがPRしていてPRに負ける可能性もある。鄧小平は棚上げ論を出している。

独島・竹島について、日本は韓国の実効支配について納得している。別に取り返そうと思っていない。ありえない。考えていない。ただ建前上、日本の領土であるとは言っている。韓国は実効支配してるのだから言及して刺激するな。少し前までは竹島のことを知ってる日本人はいなかった。いまは係争地であるという意識が広がっている。解決策は、言わない話さない無視する。これで日本政府も問題にしない。国内政治のために使わない。nationalismを刺激して人気が出るかもしれないが、国益を損なう。

慰安婦問題について、日本はlegalisticな対応をし、legal issueは解決済、というが、心開いてI'm sorryと言えばいい。大きくならないように配慮すべき。
ただ一方で、月刊朝鮮の記者が安倍に取材して、「国防軍、集団的自衛権を言う安倍は語極右じゃないか」と質問したところ、「韓国は両方持ってるのになぜ?私が右なら全世界が右だ」と言ったというが、これはその通り。安倍が言ってることが広がっている。3つの問題がある。1つは偏見。「日本にはmilitarismのDNAがある」という偏見を改めるべき。2つ目に「謝罪がない」「信用できない」ということ。受け入れるべき。3つ目に日本とドイツの違う点があり、ドイツはNATOに入っているが、東アジアには地域的安全保障の枠組みがない。これを作っていくべき。日米安保の視点でも、アメリカはリーマンショック以降日本に軍事負担を求めたい。これからはsecurity communityを作っていき、お互いに戦争はありえないと思わせなければならない。

憲法改正について。参院選後に経済から憲法に重心を移そうとしたら、drop the ball、肝心の3本目はやらないのか、という印象を与えかねないので、経済には注力し続けるべき。国内世論は2分されるし、中韓米の心配も乗り越えなければならない。

2部・パネルディスカッション

元朝日新聞主筆・若宮さん
なぜ安倍総理か。安倍が返り咲くと思った人は少なかったはず。石破は党員からの人気があった一方で安倍は議員に人気があった。ここには外交的要因も働いたと思う。8月に李明博が竹島に行った。天皇に対する発言もまずかった。9月には尖閣問題があり、北朝鮮もある。その東アジアの空気が安倍に有利に働いたのではないか。韓国・中国・北朝鮮でホップステップジャンプのジェットスタートが切れた。安倍にはお爺さん・お父さんに負けぬ実績をつくるための憲法改正という見果てぬ夢があるように見受けられる。中国韓国が持っている軍を日本は持つなというなら、日本の平和政策を評価してもらわなければならない。

ソウル大・パクチョルヒ先生
次の参院選に勝てば、2016年まで3,4年間自民党安定政権が続く。2016でも野党が勝てるかというと?で、安倍が長く続くだろう。前回政権時はideologueで、「国民の生活が第一」と言った小沢に負けた。今回、増加した無党派、流動派へのメッセージとしてnationalisticになっている面もあると思う。教科書検定、靖国問題、cautiousではあるようだが火種はある。従軍慰安婦は日本がアクション起こさないと解決難しい。防衛力が上がれば昔の日本に戻るのではないかという疑念も上がる。ancient regimeに戻ることへの不安も理解してほしい。

カーティス教授
安倍はいつまで慎重か?という懸念はアメリカも全く同じ。real安倍はいつくるのか、今とは別のことをやりたいのではないかという不安を今までの発言を見ていても感じざるを得ない。憲法に欠点があるから、ここを直す、というのではなく、経緯を問題にして、全部を書き直す、と言っていることに不安がある。「戦後レジームの脱却」というが、民主主義、自由、経済成長、平和の戦後レジームからの脱却は何を意味するのか。イデオロギーと現実がある中で、どう生き残っていくのか。日本は「対応型外交」をする。時流に乗る、対応する、検討する外交。明治維新時、吉田政権時など安定してるときはうまくいくが、流動的な今はどうか。自民党内でのCheck and Balanceがある。派閥争い、タカ派とハト派の争い。ただ、第2党がやや右の維新の会になる可能性があり、自民党の派閥争いは弱くなっている。党内論争はいい面もあった。ただ、それでも変な方向にいくとは思わない。

中国は日本を極右にしたければ今の政策を取り続ければいい。右に行かせたくないなら「普通の国になる必要ないよ」と言い、信用させること。いい関係を保てるように考えるべき。
安倍は靖国参拝しないと思う。彼は現実的で、国が得しないことはしない。さらに、もともと右だから右から批判されないこともある。Nixon goes to Chinaというが、共和党だからできた。
一方で、日本は野党が弱くなりTyranny of Majorityが起こりやすくなっている。憲法96条、国会議員の2/3の支持で、という部分を過半数にするというが、そのままにしておいた方が良い。アメリカの憲法改正規定は日本より厳しい。上下院で2/3、州の3/4、州議会の過半数。

3部・質問と応答

Q.公明党は連立政権のパートナーとして自民のブレーキになるはずだが、働いていないのでは?
ブレーキとして働くはずが、あまり自民と変わらなくなってきている。根本的に違うのは憲法96条に対する態度。

Q.アベノミクスのリスクは?
アベノミクスの取り組むべき成長戦略は人口減少・高齢化への対応、女性活用。
成長戦略なしではAsset Bubble EconomyでABEになってしまう。

Q.日韓領土問題の解決策は?
独島・竹島の解決策は、ない。問題にしないことが一番の解決策。

Q.国内の慰安婦問題が大きすぎて、日韓ともにとれる政策に限界がある。問題として大きくなる一方で、日本が解決に前向きでも、韓国が妥協しようとしても、解決されないのではないか。
日米韓強化のために慰安婦問題は解決すべき

Q.現在の日本は大正デモクラシー後に暗殺政治へと進んだ昭和を思い起こさせる。教授は政治の右傾化はないというが、それを思い起こさせる。東京大学の藤原帰一教授曰く、1%の右翼の主張に何も言わなくなったそうだ。
日本は右傾化していない。石原慎太郎を国会議員ではなく都知事にしておいたのは国民の知恵。現在は国会議員だが影響力は0。安倍も河野談話も見直さないこととした。関係改善、とまではいっていないが、いい関係を持ちたいことは間違いない。左がなくなり、右が増えてきたが、戦後の日本はうまくバランスをとってきた。中間層は変わってないのだから、そこにめがけて政策をやるべき。
周辺国が右傾化している!というと、本当に右傾化する。安心できる、つきあえる、ならしない。これから普通の国になろうとするとき右傾化していると言われるフラストレーションがある。
参院選後に民主党はなくなると思う。左だからダメなのではなく、鳩山由紀夫という無能と、壊し屋小沢を中心に置いた失敗。民主党の初めての総理大臣が鳩山ではなく野田だったら歴史は変わっていた。

Q.安倍は尖閣諸島の対応見ても、ずいぶん右な気がするが。
Softではないが、挑発的ではない。中国は問題を解決しようとすればできる。中国がこんなに早く、アグレッシブに出てくるとはびっくり。19世紀のパワーポリティクスの感覚でやっている。

Q.解決に向けた日韓のネットワーク構築はどうすればよいのか。留学もその一つ。
日本は大胆な改革をしない。金泳三の時代に韓国はglobalizeの支援をした。韓国はどの学生も英語ができるが、日本はできない。自分のいるコロンビア大学では、5年間で中国人が4倍で2100人、韓国人が変わらず800人、日本人は1/4になり180人。日本では外国に留学するインセンティブがなく、プラスにならない。日本は、韓国は日本に教えることがないと思っているが、高等教育は韓国を参考にするべき。political willの問題。金を使え!

自分のした質問

カーティス教授に2つ。
Q.アメリカは日本よりも硬性憲法だと言ったが、軟性憲法にしている国もある。これまで硬性憲法できた日本が軟性憲法を採用するのはリスクがあるという意見もあると思うが、軟性憲法としていく道もあるのではないか。
主要先進国は硬性憲法。やりやすくすることがいいのかという議論よりも、変えること前提で意図が違うような気がする。

Q.安倍のFacebookでのコメント欄での議論が話題になった。日本人がアメリカ在住のフランス人になりすまし、日本はこれまでに何回も謝罪を行い、十分な賠償をしてきたのに、中韓は未だに一部政治家の発言を捉えて批判し、また謝罪と賠償を要求することに苛立ちを表明していた。これは話題になり、かなり共感を集めていたが、慰安婦問題を解決しようとしてもこの心理があり政府は賠償できないのではないか。
謝罪より姿勢と態度が求められている。理解と対応。謝罪、賠償金は必要とされていない。謝罪が求められていると考えるのは日本の韓国に対する理解不足。

途中休憩の時間に若宮氏に1つ。
配布資料として、中央公論での元毎日新聞の岩見隆夫さん(改憲派)と若宮さん(護憲派)の対談記事があり、そこから。対談は、毎日新聞の岩見さんが

サンデー時評:若宮前朝日新聞主筆に反論がある
http://mainichi.jp/opinion/news/20130123org00m010005000c.html

という記事を書き、そこから実現したもの。こうした記事は、個々人の主観を知るにはいいですが、その根拠に何を捉えているのかはわかりづらいところがあるので、

Q.若宮さんは九条の条文と実態に「乖離があるという問題は抱えつつも、国民の間には九条もあって自衛隊もあるという状況がいわばワンセットで定着している現実がある」といことで、これは国民アンケートからそういう推測をしたと思える一方で、国際的な目として「「実態は軍に近くても、専守防衛に徹し、あえて軍とは名乗らない」ということを誇ればいい。これは日本独特の考え方かもしれないけれど、世界の多くは評価してくれると思う」と書いているが、これはどういったことを根拠にした意見なのか。

ということを聞いたところ、「日本の平和主義を評価する」とか「憲法9条を評価する」とかそういうアンケートであったり意見を聞いたことだからだそうです。

2013年4月16日火曜日

【G1サミットまとめ2】要約

ネット選挙解禁
ネガティブキャンペーンが問題
ネット選挙は権力者に不利な傾向があり、時の野党が案をまとめてきた
各党協議の結果、第三者による発信、電子メールはダメ、バナー広告は一部解禁
動画も含めて文書図画は解禁

ウェブの政策コンテストで省庁に割り振られる予算額の順番が変わった(政権交代によって、とも言えそうですが)
3.11のときもウェブが活躍
人の資質が如実に出るので、情報がよく知れ渡る

金持ってる人が有利であることは変わりない

公平中立でないメディアがあってもよい
ウェブサービスがアメリカの企業にばかり提供されていると問題が生じる?

投票以外にもパブリックコメントという関わり方を拡大しては?

公職選挙法
公職選挙法が複雑、候補者間の差を少なくするためにお金に関しては特に厳重
捜査機関の裁量で適用できないように第三者機関を作る?

ネット投票
ネット投票については、技術が追いつかないとむしろ煩雑

参考 NAVERまとめ:ネット選挙のメリット・デメリット
http://matome.naver.jp/odai/2125731330340563944
(もちろん本当か怪しいものもありますが各自ご判断を)

2013年4月14日日曜日

【G1サミットまとめ2】WEBは政治を変えるか

【URL】
http://www.youtube.com/watch?v=876ZuITwuQ4

【登壇者(敬称略)】
柴山昌彦
衆議院議員(自民党) 総務副大臣 弁護士

鈴木寛
参議院議員(民主党)

夏野剛
慶應義塾大学政策・メディア研究科 特別招聘教授

松田公太
参議院議員(みんなの党)

津田大介(モデレーター)
ジャーナリスト/メディア・アクティビスト

【内容】
津田:75分しか時間がない中で、最初7割をインターネット選挙解禁に充てたい。自民党・公明党が合意し、自民党が他党にも呼びかけて参院選までに解禁になるであろうことを踏まえて。解禁で状況がすぐ変わるとは思わないが、短期的・長期的にどう政治を変えていくのか。また、いわゆるデジタル怪文書などネガティブキャンペーンも問題になってくると思うが、正の面と負の面を踏まえて長期的短期的な視点でいくつか、ネット選挙解禁することでどう政治が変わるのか議論したい。

そのあと3割を政府の情報発信・オープンガバメントと言われているような、ネットで政治との距離を近くする日本なりのやり方というのはどういうものかという話。最終的には未来に明るい話をできればと思う。

議論に先立って、ネット・ウェブと政治の関わりについてはお考えがあると思うので、柴山さんから一人5分ずつくらい、ネット選挙のみならずウェブと政治について思うところを自己紹介とともに。

柴山:総務副大臣の柴山です。総務省は幅広い所管事項があり、放送行政・情報通信・郵政改革などを担当する副大臣です。オープンガバメント・情報通信を利用していろいろなことをやっていくのが所管です。選挙活動も実は総務省の所管です。議員立法で成立に向かうネット選挙を総務省として側面からサポートしていく。私からはこれまでのおさらいをしたい。これまでの議論の状況(資料掲げる)。

インターネット選挙は、ともすると権力者に不利な傾向がある。例えば、アラブの春。時の権力の腐敗・横暴に対して表現手段が限られている一般人が立ち上がるのにウェブが大きな武器になる。自民党がずっと政権を担っていたときに、最初にインターネットの選挙活動について立ち上がったのは民主党。平成10年、13年、16年と民主党からネットによる選挙運動解禁するための公職選挙法改正提案がされていた。そこでは幅広く行為者主体について、手段について認めていく提案が出ていた。それに対して自民党ではベテランを中心に慎重論があったが、与党にとってもしっかりと幅広く意見・主張を誤解なく伝えていくためにもインターネットというツールは大切と若手議員の一部は考えていて、世耕さんを中心にインターネット選挙PT(Project Team)が立ち上がって、自民党も呼応して議論を進めていた。そして自民党が野党になって本格的にインターネット選挙運動を解禁する公職選挙法改正を提示した。

その案は民主党の案にかなり近いもので、主体の制限なし、メールもある程度認めていく、という法案で自民党内をまとめた。野党だからこそ案がまとまった。野党になると批判が出てきて、ウェブの世界でも批判を取り込んで政権復帰ができるのではないかという力も働いた。

一般に言われているように、なりすまし・誹謗中傷をどうするかというテーマがネックになった。主体は制限もなく、メールも解禁するが、いろいろなメーリングリストがある中で、一括送信で大量の文書が出回ることを潔しとしない人もいる。選挙運動用のメール送信を許可した人にのみメールを送信して良しとする。一般のウェブに関しては解禁はするが、表示のメールアドレスについては明らかにする。という形で制度設計をさせていただいた。

我々の提案に基づいて各党の協議もまとまった。
自民党・民主党はオープンな提案にしていたが、各党の協議では小さくスタートすることを主張された。インターネット選挙活動をする主体として、第三者・電子メールはやめて、スタートすることになった。バナー広告についてはやめるといってたものを公職の候補者に限って各党協議では解禁することにした。こういう逆に広くなった部分もある。
これに対してみんなの党が法案提出し、解散前後に自民党案を参考にした案を出してもらっている。

今回参院選前に具体的に巻き直しをしようというのは、当初予定したウェブのみならず、Twitterなどソーシャルネットワークでも情報発信ができるようにしよう、第三者についても情報発信ができるようにしていこう、当初の理念に従った制度設計をしていこうということ。弊害防止のための制度設計をした上でスタートさせようということでまとまっている。

津田:いまの自民党案はTwitter・ブログはOK、バナー広告は党のみにするということで原則OKということだと思うが、公示期間中に政治家がニコ生に出る、もしくはニコニコで自分のチャンネルを作って自分用の生放送の選挙演説をすることについては。

柴山電子メールについては制限が強くしているが、動画も含めて文書図画については解禁する、ただし責任者を明らかにする、という方向で進める。各党協議で法制度を詰めるが、津田さんのおっしゃったことも基本的にOKということになります。

津田:柴山さん自身は賛成ということですよね?

柴山:役所の立場としては、議員立法でまとめていただいてバックアップしようということなので、私としての意見は言いづらいが、G1サミットなのであえて申し上げると、私たちの政治文化の成熟につながると考えているのでぜひ解禁したいと思っている。

津田:自己紹介とウェブと政治についての思いを。ネット選挙についての是非も添えて。

鈴木:民主党の広報委員長とネット選挙活動についての委員会が政治改革本部の中の設置され、その委員長をやっている。事務局長は田島要さんです。

私は明快に賛成という立場、慶應のSFCにいたときから、ネットを民主主義のプラットフォームとして最大限活用する、ネットで「熟議」をする社会を作るという思いでやってきた。世耕さんとも一緒にやってきたが、いよいよなんとかこの国会で成立して、参院選からできればと思ってる。ウェブは政治を変えるかというテーマだが、既にウェブは政治を変えているという話をしたい。

変えたことをいくつか申し上げる。文部科学副大臣を2年間やったが、1年目の予算編成で人作りの予算がコンクリートの予算に追いついて、2年目にコンクリートの予算、国土交通省の予算を上回りました。政策コンテストをやり、190の予算がノミネートされ、35万通のメール・意見が寄せられ、190のうち1から8位が人作りに関する予算だった。1番目は奨学金を充実させろ、2番目は少人数学級を小学校中学校でやって塾に行けない子にも学習権が保証されるように、ということ。

予算配分構造の順番が変わるのは、省庁の順番が変わるというのは省庁の予算形成史上初めてのこと、これはネットが政治を変えたと言って良い。35万のメールのうち、17万が10代・20代・30代からのメール。民主主義は参加だと小泉さんが言ったが、ネットが参加のチャンスを開き、政治は税金の集め方と配り方を決めるものだが、まさしくそこを変えた。

3.11の東日本大震災のときも、Speediのことがいわれますが、元の発電所からどれだけ線量が出てるのかわからなかった、大変なパニックのときに放射線を実測しようということでモニタリングチームが決死の思いで行ってくれました。そこから上がってくる情報を処理するのにネットの皆さんにお世話になりました。

文部省のウェブに情報を載せるにあたって、世界で最もアクセスが集中してただちにページが落ちることが予想されたので、部隊を派遣すると同時に、村井淳さんに電話して、モニタリングアップするまでに、文科省サーバーを世界で最も落ちないサーバーにしなければいけないので協力してくださいと言って、村井先生からISP(Internet Service Provider)にお願いしました。詳しくは文部科学白書をご覧いただきたい。民間企業・大学、問わず協力してくれました。

データの加工も衛星電話が切れて手書きでやる中で直してると誤記があるので、WIDEの人とか、エクセルを使うのが一番上手いであろうマイクロソフトの人に自分の部屋の隣に常駐してもらった。皆さんが持ち寄ってパブリックの仕事としてみんなでやれた、政治のありようを変えた。平時だったら許可の手間がかかったが、当時はいい意味で政治主導でできた。このようにウェブは政治を変えている。

津田:唯一、議員ではない立場で参加する夏野さんには、違った関わりでお話を。今のソーシャルメディアプラットフォームを握っているのがほとんどアメリカの企業であることも重要な問題になる。それは後で話すとして、ネット選挙解禁についてどう思うか、ウェブがどういう形で政治と関わるか。

夏野:さっき小泉さんの話を聞いてて、「不要な敵を作るな、不要な嫉妬をかき立てるな」というのを聞いて、俺の人生と真逆な人生だと思った。不要な敵ばっかり作ってきたが、性格変えられないのでこのまま突っ走る。ネット選挙に関してもしゃべると不要な敵を作ってしまう。案を見てると、ニコニコが政治に関してプレゼンスがないときに出てきた案なので、この2年間で状況変わっていると思う。

ニコニコやってて、YouTube、UStream見てておもしろいのは、国のリーダーあるいは可能性がある人のリアルな人間性が如実に出てしまうこと。選挙期間中などいろんな政治家の方とお会いする機会が多い。言ってしまうと、けっこういい加減なことを選挙活動で言ってる人が多い。例えば、恐ろしいことを言ってる女性参議院議員がいた。「IAEAなんてアメリカの手先です。そんなものの言いなりに成っているとろくなことはありません」。国連の機関がアメリカの手先だなんて北朝鮮の政治家かという話です。そんなことを平気で選挙区の応援演説で言ってるんですよ。でも報道されない。個別の話は報道しちゃいけないから。

別のところ、栃木県では中村さんという人が「国からお金を持ってきます!」と叫んでいた。「でも地元の人にとってはそれでいいんだろ」とみなさん一瞬思うかもしれませんが、そういう話ではない。炎上してないから問題になってないだけで、本来であればもっと炎上していい話。IAEAも事務総長が日本人で、応援して変えていくべき話で、どこかの国の手先というのは冷戦時代のおかしな話。それを国のリーダー、議員のレベルの人が公然と発言しても報道しちゃいけない。マスコミが偏向しているみたいな話があるが、偏向している国会議員がたくさんいる。ネットだと全部出る。栃木だけ持っていったらまずいだろという話が出ていい。地元であっても、地元に金を持ってくるというのは評価されていない。支持者に向かって言ってるので報道できない。報道しちゃいけないというのがあって、情報を知らしめないために選出の過程が歪んでいるのが実態だと思う。

インターネットが出てきて何が一番変わったのかというと、政治家がちゃんと考えてちゃんとしゃべれる人とそうでない人が見事に分かれた。ちゃんとしゃべれない人はG1にきてないし、ニコ動に出られません。石破さんが幹事長になったのはかなりニコニコが貢献したのではないかと思う。ニコ厨の応援がすごい。本人も言ってるけど、顔も悪いし、話してることがオタクっぽい。けれど、しゃべってることが常にロジカル。小泉(進次郎)さんはメディアに出ないと言っていたが、出るべきだ。

様相が変わってきている。国会議員、リーダーの資質がさらけ出されるようになるという意味で絶対に良い。
もう一つ、ウェブとかインターネット選挙に関しては、メディアの側面と単なるコミュニケーションツールの側面があり、同等に網(規制)をかけるのは齟齬が起きると思うので議論したい。

津田:ネット選挙解禁についてと、ウェブがどう政治を変えるのかという点で。

松田:みんなの党で、副幹事長・政調副会長・広報委員長という立場でネット選挙解禁をやっている。夏野さんが「栃木県で国会議員が公共投資を引っ張ってくるぞ!と言っている」と聞いてドキッとしたが、渡辺喜美代表は逆で(注:みんなの党、渡辺喜美代表は栃木3区)、栃木で農業王国でTPP参加するべきだというと石が飛んでくるような世界でも、結果的に圧勝した。残念ながらこういったところがマスコミに取り上げられなかった。ネットでは、良いところも見ていただくきっかけになるのではと思っている。

2年前に出馬しようとしたとき、最初にびっくりしたのが、インターネットが選挙に使えないこと。ほんとに驚きました。自分の考えをわかってもらうこと、国民の皆さんのアイディアを吸い上げること、という政治家の宿命にこれ以上に優良で便利なツールはない。なぜ使えないのか。ほかの先進国、民主主義国家では全て使える。日本だけが使えないことで驚いた。三木谷さんにこういうことを言いました。例えば、小売業者が強力な団体を作って立法権を持って小売業はインターネットを使ってはいけないということになるのはおかしいだろうと。既得権があるんだろうと思う。絶対に変えなければならないと思ったことの一つ。

公職選挙法全体がおかしいのではないかと思っている。お茶は出していいが珈琲は出してはいけない。もともと珈琲屋だった私はエスプレッソ出そうとしたら止められた。お茶はいい。わけがわからない。ペットボトルで蓋を閉めて出したらアウト、空けて出したらいい。選管によっても違うと思うが。弁護士が見てもわかりづらい法律になっているので、直していかなければいけない。

前回の衆院選で広報委員長としてチャレンジした。選挙期間中はFacebook、ブログ、一切更新できない中で、本人が更新するのではなく、自動的にブログ・ウェブサイトを見ている視聴者によって動いたらどうなるか。と思った。みんなの党のFacebookを作り、投票という機能を持たせて、原発がイエスかノーか、最初の質問でみんなの党は期待できる政党か、イエスかノーか、ということで公示日以降も投票が集まるとグラフが動く。このくらいいいだろうと思い、実際総務省に確認したところ、それはなんとも言えないと言われた。しかし実際それを使い始めたら、選対本部に総務省から連絡があり、あれはグレーですよ、警告しましたからねという警告が2回あった。あれを使い続けたらどうなるかわかりませんよ、危険を察してやってるんですねという脅しがあった。公職選挙法はわかりづらいなと痛感した。賛成か反対かと言えば法案も2回提出している我々は大賛成、なるべく自由に使っていただきたいと思ってる。

津田:自己紹介とウェブと政治についてのプレゼンを頂いて、順調に押しておりまして残りQ&Aまで30分。

ネット選挙は解禁される前提で短期的な話と長期的な話をしたい。
ネット選挙解禁以前の話として、昨今の選挙がデータ解析重視になり、小選挙区制になり、選挙予測がデータ分析できるようになった。選挙予測ができるスタッフを抱えているのが有利になるのではないか。アメリカは顕著で、オバマは前回の選挙から選挙分析の5倍の人員に増やしてデータマインニングで勝ったと言われている。

ニコニコ生放送で中継されている中でコメント見ていたが、「ネット選挙解禁したら結局金持ってるやつが最強なんじゃねえの?」という声がある。地盤看板カバンに頼らなくても新規参入をしやすくするのではないかというメリットが叫ばれる反面、アメリカを見るとカールローブのような、ラスプーチンのようなメディアコンサルタントが幅を利かせて、よりメディア対策にお金がかかっている状況。

ネット選挙解禁したところで、ネットでどうやって情報発信していけばいいかわかんない、G1サミットに来ているような方は大丈夫だと思うが、ブログとTwitterどう違うんだ、っていうところから始まるような政治家がついていけるのか、というときに、今の政策秘書ではなくメディア対策秘書を雇うのか、ネット選挙解禁したら広告代理店とかPR会社とかドワンゴが儲かるだけじゃねえかという。

夏野:もしかしてそれで株価上がってんのかな。最近、根拠なく。

鈴木:それは正直あると思う。現に、自分でTwitterやブログできない先生でも、自分よりお金かけてすばらしいウェブを持ってらっしゃる。とはいえ、オールドメディアでもお金持っている人が強いというのは事実。そこで一矢報いるためにお金だけではなく、ボランティアでいろんな知恵や時間を作ってくれる人をより広く集めてくれるネットは解禁した方がいいのではないかと思ってます。

前提として、ネット選挙解禁はうまくいくでしょうとおっしゃったんだけど、自分も2月5日まではうまくいくと信じていた。
2月5日は三木谷さんがやってる新経済連盟で平井さん、自分、松田さんと各党の法案責任者が出て、基本的にはウェブもSNSもメールも政党も候補者も第三者も全部できるということになった。細かく言うと、民主・みんなが電子メールはオプトアウトで、自由民主党がオプトイン、広告のところは民主党とみんなの党が政党と候補者、政党は法定費用内、自民党は政党で、というところがあるが、今後話しましょうということだった。昨日から雲行きが変わってきたという情報がある。自民党と公明党で協議をした結果、骨子が出てきて、メールについて第三者は使えないようにしようという話が出てきた。そのニュースが入った時三木谷さんの事務所にいたが、平井さんからも連絡があったのですぐ電話をして話を聞いた。公民権停止の危険が出てくるリスクを排除するために、第三者のユーザーを省くことにしたということだった。真意がどうかわからないが、何か聞いてらっしゃいますか、副大臣。

柴山:ご存知の通り、平井PTのもとで自民党案通りました。今後各党間の協議を迎えるにあたって、これから何が起こるかをきちんと想定しようという話を聞いている。来週が山場。せっかくマイクを持ったので、今のことと合わせて、いくつか誤解が生じているようなことについて発言させていただきたい。

まず松田さんが、なんでインターネットを選挙に使えないんだとおっしゃってましたが、実は、今の法律でもインターネットを政治活動には使える。政治活動と選挙運動は何が違うのかというと、一番大きいのは期間の問題。公示という一定の時点よりも前であれば、私に投票してくださいという露骨な表現は事前運動でまずいが、既にかなりいろんなことを発信できる。選挙運動期間中という、国民が最も候補者とか政党についての情報を求めるときにそれを更新したり新しく発信することが許されないだけで既にオープンになってるウェブは見られるし、検索すれば情報は手に入るという現状。誤解があるといけないので明らかにしておきたい。

何が問題かというと、選挙運動期間中に大量の第三者による誹謗中傷のメールなどが殺到した場合、いろんな書き込みがでた場合にどう対応するかという問題がある。あと選挙運動期間中はお金のある人が有利なんじゃないか、ということについて、まさしく資金を持ちスタッフを持っている人がある程度有利になってくる宿命はある。しかし、それは選挙費用に含ませることである程度乗り越えられる。けれども、大量の、特にネガティブなキャンペーンについてどう対応するかということが、おそらく、私自身はフラットだが、

津田各国はメールもOKにして、第三者のユーザーが呼びかけも含めてOKにしたら選挙期間中にメールボックスが一杯になることが多かったので、メールに関しては規制しようという議論も出ていると聞きました。

柴山:おっしゃる通りです。そういうことを前提として、ある程度縛りをきつくした方がいいという意見が出ていると想定しています。ただ私自身は聞いていないので各党協議を見守りたい。

もう一点だけ。私はそうは言ってもやった方がいい、と思う。夏野先生がおっしゃったように、解禁しないと今の仕組みだけでは足りない部分が多々出てくると思う。国民が一番関心を持っているときに、選挙期間中に私は集会をしますということすらネットでオープンにできない。イギリスでは選挙期間中に街宣車が走ることはないそうです。なぜならどの候補者がどこでどういう活動をしているということを伝える手段が完備されているということに拠る。ですから、きちんとした状況をフェアな形で受け取ることができるためには、国民が関心の高いときに的確に情報を伝えていく、ビビッドに伝えていくことが必要になるのではないか。

津田国民も24時間365日政治のことを考えているわけではないので、一番大事な公示期間中に情報が解禁できるというのが重要なのはその通り。夏野さん。

夏野:少し誤解があると思うのは、ウェブの世界ですごいお金をかけたフラッシュばりばりの最高のウェブサイトを作った候補者が票を得られるわけねーじゃんという話です。さらに、大量のメール送信したら票減りますよね?同じ候補者からドバドバきたら。議論をしている政治家の方々の中にわかんない変な人がいっぱいいるんだと思う。そういう人を排除してからじゃないとこの議論はしちゃいけないと思う。提案したいのは、この議論に参加する人に一通りウェブ検定か何かやった方がいい。使ってない人に議論させてもしょうがない。

津田:ちゃんとしゃべれる議員がネットでは目立つようになってきた。という話があった、ソーシャルメディアでは発言が蓄積されていく、ニコニコでもタイムシフトで見られたりする。政治家のいろんな側面を知ることによって、名前・地盤だけで勝ってきたような議員が淘汰される時代がウェブ選挙でもたらされると思いますか。

夏野:情報の非対称性が民主主義の敵。民主主義が成り立つためにはみんなが同じ情報アクセスを持っていなければならない。そのときに、将来のテクノロジーの進化を制限するような法律を作ってはまずい。事後対応で処理できる話と、事前に対応しなければいけないを区別して議論してほしい。大量送信は逆効果になる。

鈴木:今晩は大事な日。議員としてではなく個人としてなんとかやりたい。せっかく世耕さんとも何年もやってきたし。元々堀さんがYES! Projectというのをやってくださって、そのあとワンボイスキャンペーンとか、いろんな人たちが引き継いできた。平井PT案は細かいところはあるけど、僕らは乗ります。少なくとも民主党はまとめます。平井案を進めようとしたときに、僕も野党も他党も含めて、フロアに集う、ニコ動を見ている皆さんもどうしたら平井PT案が通るのかという情報、ヒント、提案をいただきたい。

津田:それは夜のオフの場で。せっかくなので、あんまり議論されていない2つのことを話したい。1つは、選挙期間のテレビ報道は配慮する。どこかの党を取り上げたら全部の党を言わなきゃいけない、特定の候補者をやったときは全部できるだけ同じ時間で、討論番組をやったら同じ配分でしゃべらせる。公職選挙法というよりは放送法の縛り。テレビというのが公正中立で不偏不党でなければならないという自主規制でなっている。ネット選挙解禁されて、ニコ生も自由にやるときに、政治家が自分でチャンネルを作ってやるのはいいんですけど、ニコ生が選挙特番やるときに、放送禁止用語もない中で、自主規制の基準がかわってくる中で、放送法の規制を受けていない中で、ニコ生がどういう番組作りするのか

夏野:ポリシーの問題だと思うが、不偏不党、自分たちが主義を持たない。メディアという風に自分を認識していない。完全プラットフォーム。公式コンテンツに関して、ニコニコやってる全体の意思統一ではないが、この間の党首討論を見ると政権を獲る可能性がない党首を呼ぶ必要なかったなと思う。テレビはそれでいいが、ネット選挙解禁されたら、反論のための反論にものすごく時間を使っていてまともな議論になってないケースもある。政権をとる可能性がない党は際立たせようとするので。そういうプラットフォームが出てきていいと思っている。どこかの政党を応援しようという意図は透けて見えますよ。

津田:一方で、アメリカのフォックスみたいに旗幟鮮明にしてここを応援するんだというやり方もできる。

夏野:ニコニコ的には絶対そういう対応はとらない。なぜならそういう自信もないし、評価できるものでもない、ユーザーが選ぶものというスタンスなので。ただそういう放送局が出てきても良い。そういうもんだと思ってみんな見る。そのくらいの見識は日本国民あると思う。

津田:一方でプラットフォームであるから、政治家は勝手にチャンネルを開設してやってもいい。

夏野:勝手にやればいい。いまの公職選挙法は国民を馬鹿にしている。ペットボトルを蓋した状態でもらったら一票投票すると本気で思っているのかという話。国民のレベルが高いということをふまえて法制度を見直してほしい。

津田:もう一つ最後にネガティブキャンペーンの話をしたい。一つ確かにそうだと思ったことがある。
今の自民党案だったらプロバイダー責任法を変えて、現行のプロバイダー責任法ではネガティブキャンペーンを削除するのは通常1週間かかるので、選挙期間だけ、政治家のネガキャンについては1日や2日で落とせるようにしましょうという対策が今出ている。

ある人と話していて、あ、そうかと思ったことがある。Googleの予測検索、Suggest機能。あれどうするのか。ある議員について何か書いたら、いい予測ワードが出てこないことが多い。議員の問題だ、過去に起こしたこと、今のデマも含めた予測ワードに出てきてしまう。ネット選挙解禁になって、さあ調べようかということでブラウザに議員の名前を入れたら予測ワードにずらっとネガティブなものが出た。というときに、これはプロバイダー責任法でどうこうできる問題ではない。

実際に去年裁判も起きて、ある人がネガティブなデマが出ているから差し止めをしてくれということで地裁がGoogleに差し止め請求をしたが、日本の法律には縛られないということでGoogleは拒否してしまった。しかも、掲載されたブログとかTwitterの情報じゃないから何もできないところがある。かつ、ネットのサービスはGoogle, Amazon, Apple, Facebook, Twitterなどアメリカの企業であるので、日本の法制度と齟齬が生じたときに権利行使が出来ないところをどうしていくのかというところを議員の皆さんに伺って、最後に夏野さん。

松田:現行法でも落選運動は規制されていない。先ほど柴山さんからお話ありましたが、政治活動なのか、選挙活動なのかわかりづらくなっている一つの表れ。我々が出した今の法案に関しては、我々は落選運動も規制しなくて良いという形にしている。落選運動、ネガティブキャンペーンに対してネットを使って反論できるので、規制をする必要がないと思っている。さらにいえば、有料広告も解禁するべきだと思っている。有料広告は法定選挙費用内で候補者本人が使っていいということ。例えば有料広告の中に、誹謗中傷に反論するための広告のバナーを貼るなどを含めてやっていけばいい。基本的に自由を与えて、何か問題が起こればその都度考えていけばよいと思うが、反論を活用していくという考え方。

鈴木最悪のケースを考え出すといくらでも考えつく。一方で良いケースを考えるといくらでも考えつく。最悪のケースが0にならなければやらない、ということでこれまでやらなかった。結局はある程度の比較衡量で、思い切りが必要だと思う。一方で、虚偽表示罪というのがアナログでもデジタルでもあって、虚偽なことを書いたらダメだよと。ネットを使って、善意を持ってやりたい、言いたいと思ったことはどうぞ言ってくださいということ。しかし悪意を持って虚偽であると知りながら悪質に何かするときには、最後は虚偽表示罪で加罰対象にするということで始めてみようと。3年くらい経ったときに振り返ってより良いものに洗練させていけばいいのではないかと個人的にも民主党でも整理をした。

津田:どんな議員でも多かれ少なかれネガティブキャンペーンは出てくるということで、そういうものだと受け入れて意識を変えていかないと時代に合っていかないということですか。

鈴木:既にネガティブキャンペーンをされている方がいて、俺はああいうことをやられた、こういうことをされた、だから反対、心配だ、という議論がほとんど。その可能性を0にすることはできない。だけども、それを上回る反論もできるし、政治を有権者に近づける有力なツールなので、そういうことに賭けようと。

自主的にどれだけ、やっぱり使って良かったというWinWinでガイドラインを作るとか、モンスターなマイノリティに対してノーマルなマジョリティが黙って見殺しにせず、ネットの世界では勇気を持って、叩かれながら、健全な議論を進めていくために立ち上がってほしい。3年後続けていく、進化させていくためにもノーマルマジョリティに問われている。

津田:ニコニコにコメントしてるユーザーにできるのか問われている気もしますね。エールという意味もある。ニコニコのコメントが政治家に届いて対話が始まることもある。

柴山:放送メディアが今のままでいいのかという問題提起については私も強く感じている
公平中立でないと候補者の公平な競争を害する。これは一面そのようだが、実は公平中立を装って不公正な報道をすることがけっこうある。電波は有限だが、うちの局がこの政党を応援する、というのがあってもいい。ここのチャンネルはこの政党を応援してるということが国民がわかった方がいいのではないか。どこの放送局もおしなべて全ての政党を同列に扱うのは実態と外れているのではないかと感じている。

ネガティブキャンペーンがGoogle等に表示されてしまう問題について、ウェブでネガティブな情報が大量に出てくることについては、夏野さんも言ってましたが、本当にそんなネガティブキャンペーンいっぱいやったからって有利・不利にならないと思います。今回の選挙期間中、膨大な怪文書を撒かれたが、圧勝できました。ある程度有権者が成熟してくれば反論も出来るし、ことの真偽をウェブを使って調べることもできる。そういう成熟した文化にできればいいと思うが、そこにはある程度時間がかかってくるようにも思う。ネットの作法、自分で調査批判能力を有権者に持っていただくプロセスが必要になってくる。私は自民党案でやっていただいていいと思っているが、来週の政党間協議がどうなるか固唾をのんで見守っている。ここにお集まりの方に世論を作ってほしいと期待しています。

夏野:僕自身、夏野剛と検索しようとすると離婚と出てくる。やめてほしい、わけわかんない。
松田:松田公太も野口美佳と出てくる。

夏野:メディアが海外か日本かというのは、ほとんど僕は関係ないと最近思ってきている。アメリカが日本の国内政治を牛耳っていると言ってる人もいるが、ほとんど関心ないと思う。中国は関心あると思うが。一企業のGoogleアメリカの国籍の会社だからという理由で操作するなんていうのも、SFの世界だと思う。

Googleは効率的に世界全体でインフラ作ろうかということをやってて、政治のことに関しては、中立でいいかもしれない。日本の国内でどこの選挙区が勝つとかどうでもいいから。企業の国籍がどうのと言ってる時代もいいのかなと。

津田:民主党政権になる、オバマ政権になったここ3、4年政府のデータが公開され、官民が利用することでネットと政治の距離が近くなる現象が起きていて、そこは民主党で、こと情報公開、オープンデータというのはほんとに進んだと思っていますし、特に事業仕分け、お金の流れを明らかにした行政事業レビューシートは大きな成果だったと思う。
自民党政権に政権交代して、続くかどうかけっこう微妙というか自民党が民主党のやってたことを否定から入る流れもあるが、ネットと政治の距離を近くする意味で政府の情報公開は不可欠だと思うが、行政事業レビューシートは続くんですか柴山さん。

柴山:行政管理については総務省の所管だが、行政改革一般については行革担当大臣が別にいます。ただ、行政レビューシートは河野さん、平さん、私などが構想日本の方で最初に作り上げたものを蓮舫さんが活用して事業仕分けにした。自民党の中で行政レビューをしようという若手がパイオニア。たしかに行政の一部が事業仕分けということをやると、
例えば、国会の決算行政監視委員会で活用するであったり、総務省の行政管理セクションで使っていき、活用の仕方を考える事によってよりフェアな形で生かすことができるのではないか。

オープンガバメントについては、情報通信に関わる分野で、まさしく私たちがこれから進めていかなければいけないところ。民主党がやったから否定というのではなく、改良してバージョンアップさせていきたい。

津田我々が政治に参加するとなると、投票か、もう一つ限定された形だがパブリックコメントという形がある。結論が出た段階で意見を言っても、反対があってもひっくり返ることはなかったと思う。行政や自民党党内で今リアルタイムでやってる議論の一部が公開されて、論点がこうなってますということで、限定的に議論に参加させて熟議の質を高めていくことがネットと政治の関係として選挙以外でもあると思う。熟議をやっておられた鈴木さん。

鈴木:マイナーな話ではあるが、研究費が毎年単年度主義で3月に使い切らなければいけないというのをなんとかしたいという声があり、文科省で熟議掛け合いというのをやりました。ネット上とリアルで、審議会に出てくるえらい人ではなく、現場で研究している20代30代の博士ポスドク助教に集まってもらって、リアルとネット上で熟議をしてきて、予算はないが、予算の使い方の制度改革をしたいので何が一番要る?というのを先に話してもらって、そのプロセスを公開しネットで意見もらったら、繰り越しをできるようにしてくれという話だった。

僕が想定していたのと違うことがプライオリティ高かった。だったら繰り越しをできるようにしようということで若手向けの科学技術研究費の法改正。繰り越しを自動的にできるようにするということで、まさに一石三鳥で困ったのは財務省だけ。納税者からしたら2%くらい予算減ってもいいくらいまで言ってくれた。3月末に研究やめて予算を使い切らなきゃいけない。1ヶ月時間がとられる。税金使って研究してるのに良心が傷む。これがなくなり、研究者はハッピー。納税者からすれば100のところが98でいい、逆に100のところが102のパフォーマンスできるから。毎年口突っ込める査定権だけは振ることができなくなっちゃったけど、みたいなことで喜ばれた。マイナーかもしれないが、そういうことが始まっている。ネットを使った直接民主制ではなく、限定的・間接的に集合知みたいなものが影響を与えるのがネットの可能性だと思うが、残り10分。

鈴木:10万人がサポートすれば法律ができるので、注目してほしい。


会場からの質問
郷原弁護士、郷原コンプライアンス法律事務所):今日の話は、ネット選挙を含めて選挙のルールをこれからどうしていくかという話だったかと思うが、もう一つ重要な話は定めたルールをどう守らせていくのか、エンフォースメントの部分。

公選法はわかりにくいということにも関連するが、日本の場合、公職選挙法に関しての罰則が、捜査機関の裁量で適用できる諸外国は専門の機関を作って規制を判断してペナルティを課すことが多いネット選挙も含めていろんな選挙活動ができるとなると、それに対する違反のいろんなペナルティを考えていかないといけない。検事やっていた経験からすると公職選挙法に対する罰則の適用は誠に恣意的で不公平。警察・検察の動機があって、「こいつにやってやれ」ということで狙うことがある。そういう状況を放置したままネット選挙を解禁したら、志のある人が狙われかねない。先ほど言ったようにお茶はなぜだめなのか。蓋がついてるのは市場価値があるから。いくら相当と書けるから、起訴されたら有罪になる。直接捜査機関の介入ができない仕組みを作ることが必要。弁護士も公選法を知らない。弁護士の世界もアドバイスできる人材を育てることも必要。

加持(官邸国際・IT広報室):震災の直後にすずかんさんや近藤ジェームズさんの力を
Twitter/Facebook/Lineをローンチした。今日お話を伺って感じたのは、沈黙は改革の敵である」見ている方達に、是非スピークアップする良き動機を皆様に一言ずつ挙げてほしい。このネット選挙が解禁されることによって日本にもたらされる良い効果をいただけたらと思います。

神谷(自民党大阪第13選挙区支部長):選ばれる側の視点で制度が作られてないか。参画する側、国民の視点がないんじゃないかと思う。話し合われてるのは選挙が始まってからの規制なので、自分は選挙始まる前に動画を撮りだめしておいて、選挙期間中に見てもらえるようにしている。違反にはならない。あんまり、選挙期間中に限って規制をどうするというのはナンセンスだという思い。若い世代がネットをよく使う、彼らの参画意識、投票率がどう高まるかか、という視点でネット選挙を考えないといけない。将来ネットで投票するときにどういった整備が必要なのかという論点で考えていかないといけないが、いまのレベルは低い。ネットで投票することについてみなさんのお考えを。

佐藤ドットジェイピー):ヤフーみんなの政治、楽天政治ラブジャパンなどの運営サポートをしてる。次の一手として参画する一つの方法としてネット選挙運動とパブコメが出た。もう一つがネット政治献金。
2つ問題があって、議員側がネットで献金を集めておられない。楽天の三木谷さんが頑張ってインターネットで政治献金ができるところまで持っていったが、代わりに申し上げるとコストかかってます。議員側が集めさせてほしいというのでコストかけて作ったが、あんまり集めておられないなあという印象。
2つめはモバイル。携帯会社が3社ともネット献金をモバイルで決済したくない。内部規定で禁止になっている。法律では大丈夫という確認がある。あとはモバイルの判断。

瀬尾(講談社ウェブメディア現代ビジネス編集長):ネット投票に賛成なのか反対なのかを理由も含めて。

津田:エンフォースメント、第三者委員会を作った方がいいんじゃないかというところで柴山さん。

柴山:郷原さんは年金機関の第三者委員会でずっと責任者としておありになりました。公職選挙法が恣意的に運用されているということは私も感じる。裁量が働かないような形にするのは検討に値する。ただ運用はやはり難しい。表現の自由を尊重しようとすると、あまり厳しい規制はできない。今の公職選挙法はなぜがんじがらめかというと、候補者間の差をなるべく少なくしようとする目的で、特にお金が絡むことには非常にセンシティブになっている。ある程度壁をとっぱらって原則自由ということにして、ニコニコ動画で先ほどお金持ちしか出られないという意見があったが、そこはネット献金を推進するであったり、公的な金を入れることには賛成しないが、政党助成金で色を付けるなどの形をとって、表現の自由については自由にするということで、第三者が明快な形で取り締まりをする方向がいいのではないか。

津田:夏野さんモバイル献金について。
夏野:これはけっこう簡単で、どこからどこまでが本当に政党で、政治的グループなのかという主体が掴みにくいから。キャリアはなんの悪気もない。悪意を持たないきちんとしたコンテンツが提供されて対価が支払われているものだったらやりましょうということでやっていて、政治の世界でもそれを誰かが担保してくれればやる。ただ政治と宗教、難しい。あとでキャリアが、なんでこんな人たちの献金プラットフォームとしてやってんだと言われるのが怖いだけ。キャリアが主体性をもって判断することはないので、そういうのをここでオッケーと言ってくれれば献金していいという認定してくれる中立機関を作った方がいい。コンセンサスとしてそれがいいとやってくのが早いと思う。一社一社でやろうとしても怖くてやらないと思う。

津田:インターネット投票の賛否について、短期的には反対。eTax、電子の確定申告ってめんどくさい。電子になったら楽になるかと思ったらもっとめんどくさくて紙でやった方が早いっていうのがある。ネット投票はそこが楽にならないとダメ、それの本人確認のためにマイナンバー制やバイオメトリクスなど技術が追いつかないとむしろ煩雑になるだろうと。ネット投票解禁にするよりは、ソーシャルメディアで投票行こうぜって呼びかける方が有効だと思います。

松田:もちろん法案に書いているので賛成。ただおっしゃる通りいますぐの技術では難しい。法案ではプログラム法と言われる、将来的な解禁に向けた調査・R&Dを始めて行こうということにしている。将来的には技術的にできるようになるだろうと思っている。

なぜネット投票が必要かというと例えば今回韓国で、ネット選挙とも言われた大統領選で多くの方がネット上で書き込みをされた。ネットで有利だったムンさんがパクさんに負けてしまった。なぜかというと、ネット上で討論してる人たちと実際に投票に行く人たちがまだ結びついていない。若い人たちがネットの主体であって、その人は投票行動に結びつかなかった。もちろん日本に比べては高いが、年配の方に比べたら少なかった。そこを結びつける意味でもネット投票を作らないといけない。エンフォースメントについてはガイドラインを作らないといけない。もう一つはノーアクションレター。企業はできるが、公職選挙法にも適用したい。

津田:ネットと政治のよい効果と言い足りなかったこと。

鈴木:今のマスメディアは基本的に商業メディア。特にテレビは制作費がかかってる。視聴率がとれるかとれないか。どうしてもステレオタイプ的な情報を流さざるを得ない。テレビとはそういうもの。SNSのソーシャルっていうところに期待している。ネットに投稿される動機は視聴率をとる以外のいろんな動機がある。世の中をよくしようという動機でやり取りされるコミュニケーションが増えることに期待している。

みなさんもお感じと思うが、実は党派による違いよりも、世代による違いなどが大きいことを議員として感じる。マスメディアから流れてくるのは、ステレオタイプ、民主党は、自民党は、みんなの党は、で話をしている。ネットでいろいろ意見を言ってくれるようになると、そうじゃなくて、個々人の議員がこういうことを考えてくる、やってきた、こういう役割が得意だ、ということが議論され、政党政治の枠組みを進化させていく可能性がある。

柴山:ガイドラインを決めなければいけないというのはその通り。ノーアクションレターについては総務省で答弁作ったが、これは行政が指導してやるのではなく、直罰ですので、ノンアクションレターにはなじまないかなと考えています。

松田:政治にありがちな総論賛成各論反対ということにならないように基本的には各論もかなり近いところまできている。若干、第三者のメールユースということに危惧を感じているので、ぜひこれを解禁に向けて必ず達成していきたい。

夏野:ここにいる人がゼロベースで考えることが大事。公職選挙法にもなぜ警察が動いてるのか、おかしい。ノウハウがない。ネットが出てくるタイミングで第三者のSECみたいなものを作って不偏不党のことをやるとか。過去の延長線上に未来がない。
小泉さんも言ってたが、周りに気を使いながら徐々に、っていう改革は期を逸した。思いっきりゼロベースでやるために政権交代が起きてると思うので、是非やりましょう。

津田:ネット選挙解禁しなきゃいけないよね、そうだよね、という議論からは一歩先に進んだ議論ができたのではないかと思っています。ウェブと政治の距離は近くなっていくと思いますし、例えば今回の議論もニコニコ動画など通じてコメントがきている。新しい政治とのウィンドウになってるんだろうなと思いました。来年のG1サミット、1年後はまた状況変わってると思う。個人的にもネット使った政治のメディアを作りたいと思っている。ありがとうございました。

2013年4月9日火曜日

大学卒業要件にTOEFL90点?〜学生の憤りと政策形成のジレンマ

昨晩、あるニュースがありました。
「大学入試にTOEFL義務づけを」 首相に自民提言
http://news.goo.ne.jp/article/asahi/politics/TKY201304080323.html
表題には出てないのですが、TOEFL90点を大学卒業要件にする提案もされています。

Facebookでの学生の憤り

これについてFacebookで主に後輩たちが憤っていました。

まず、
Sorry for keep posting. But I just couldn't stand it. これ委員会を通ったって事は本当に実行される可能性があるってことでしょ?このトップ30校がどの大学をさしているのかわからないけど、卒業要件にTOEFL90は無茶でしょ。そして、でも英語教員は80で良いという矛盾。

という投稿。これに対して、
曖昧な表現「グローバル人材」 
確かにTOEFL90を卒業要件にするのは厳しい 
アホ過ぎ。ほんとアホ。自分たちの学力を90超えさせてから考えるべき。何を思ってるんだろう。 
おっしゃる通り。この現場感のなさ。 
まずは国会議員全員にTOEFLを受けていただいて、それから話を進めるべきだと思う。
てかこれ実現したらETSがめっちゃ儲けることになるんだろうね。個人的にだけど、ETSが国にロビイングして実現させようとしているような気がしなくもない笑
…という勢いで30分もしないうちに総スカンになっていました。

政策形成の枠組みと「高めのボール」のジレンマ

このニュースを受けて、憤る前にもちろん実行される可能性はあるものの、どういう過程で実行に移されるのかということを落ち着いて考えてみること、そもそも教育再生実行本部って何?ってところから考えてみる必要があります。

教育再生実行本部、教育再生実行会議、文科省の関係や立法・改革実行の枠組みについては下記の共同通信47ニュースに詳しいです。

【Q&A】安倍政権の「教育再生実行会議」って?

出典:上記47ニュースより

つまり、今回は教育再生実行本部からボールが教育再生実行会議に投げられたことになります。
http://ja.wikipedia.org/wiki/教育再生実行会議
教育再生実行本部は国会議員が中心のようですが、教育再生実行会議にはWikipediaを見る限り多くの民間の方、教育現場の方が入っているようです。ここでもう一度、議論がし直されて、現実的な案になることが予想されるので、あえて実行本部は高めのボールを投げたものと思われます。

「政策形成過程で折り合いができてくるものだから、政策提言は高めのボールを投げるのが鉄則」とタムコー先生もおっしゃっていましたが、こうして提言段階で高めのボールを投げたのが報道されて世論に反発されると、さらに推進力が落ちてしまうという政策実現のジレンマがあるように思います。

党の内部機関が提言ということなので、これからどう具体的に制度設計、実行がされていくのか、ということに目を向けると、教える側の能力など考えて、妥協して80くらいになるんじゃないか、などと考えることもできます。

TOEFL90は高すぎる、議論してる国会議員はそれくらいできるのか、という声については、中国・韓国のトップクラスの大学は大学平均でそれくらいあると思われるので、それくらい目指さないといけないとは思います。学生が抵抗勢力になってどうする。もちろん、卒業要件にする、という制約はきつすぎると思いますが。

現実的代案とその付帯条件

卒業要件、という形であればトップ大学、30校は多すぎる気がするので、
旧帝大、一橋東工大、早慶上智ICU、あと秋田の国際教養大学あたりを15〜20校くらい指定して、卒業要件としてTOEFL80、TOEFL90取れたら2単位、100取れたら4単位追加であげるくらいはどうでしょうか。

もちろん、取るための補助金もセットで。前回の記事でロバートフェルドマンさんが「医療費を5%削減して毎年40万人海外留学させろ」と言っていたことを紹介しましたが、TOEFL80取るための海外留学促進、また英語学習の援助の仕組みを合わせて作ってもらわなければならないと思います。

ETSに金が流れるのが問題なのであれば、開発費をきちんとかけて日本でテストを開発するべきです。ただ、TOEFLというテストはなかなかよくできていて、あれを真似る形になるとは思いますが、それで問題にはならないんでしょうか。
リーディング・リスニングはマーク式で自動採点するとしても、ライティング・スピーキングを日本人がどう採点するんでしょうか。そこでまた外国人雇うんでしょうか。リーディングで使う教材は無料で使えるんでしょうか。開発費をかけて開発し、外国人を雇って採点してもらうことのコストとどちらが高くつくか。TOEFLは割といつでもどこでも受けられる便利さがありますが、それを確保できるのか。
それらに突っ込んだ議論が早急にされるべきだと思います。

追記:上智大学と日本英語検定協会が共同開発したTEAPテストというものがあるそうです。これが普及するでしょうか。
http://toyokeizai.net/articles/-/12124

最後に

加藤嘉一さんの新連載がダイヤモンド・オンラインで始まりました。
「中国民主化研究」揺れる巨人は何処へ
http://diamond.jp/articles/-/34416

是非ご覧になってください。

2013年4月4日木曜日

【G1サミットまとめ1】短く要約

より短い形で要約してみました。

〜パネルディスカッション〜

ダボス会議報告
日本が議論の中心に。
1)世界経済の見通し好転
2)アベノミクスに対する期待
3)日中問題はグローバルイシュー

安倍政権運営について
これまではよくできている。
今後は党との関係が鍵に。

TPP、財政再建について
党との調整が必要。
TPP、党内での議論が活発化。
財政再建、近いうちにやる。

マーケットの要望と期待
期待感はある。六重苦の解消を。
安倍さんはTPPやりたそう。
党との関係のみならず、世論も重要。

規制改革
世銀の規制の質ランキングを意識してみては。
オリンピックをやろう。例えば羽田空港の拡張。

官邸(政治)主導にするには
事務次官会議の改革

マルチステークホルダー
政治家が経済をわかるのみならず、経営者が政治を理解するべき
ネット選挙運動解禁は政治界と経済界がうまく連携した

国土強靭化について
小泉政権前に対GDP6%超えだったものが現在3.2%、それを3.6%にする。
フランスが3.1%、国土の地形を考えればそんなに高くない。必要なところに。

インフラの民間委託
上下水道と有料道路で簿価100兆円ある。
民間に委託していけば、政府にお金も入り、地方でのビジネスチャンスにもなる。


〜質問〜

医薬品ネット販売
揺り戻しが起きる可能性。
検討会の人事を官邸が握っていい方向に

移民政策
医療介護のみならず、お手伝いさんも呼び込む?
どちらかというと知的労働者を呼び込むべき?
知的労働者を呼び込む環境に日本はない?
2030年には人口が毎年100万人減る

選挙制度改革
TPP、バラマキは定数不均衡問題と関連。
抜本的な選挙制度改革後の選挙は、遅くとも28年の参院選から
自民党の敗因は小泉・安倍期の改革をやめたこと?

地方活性化と教育改革
医療費を削減して海外留学支援する代わりに海外留学を大学卒業の必須要件にしては
人材が地方に行く場所がない、2030年に地方の人口は20%減

少子化対策
お題目は出ても実行されない。ボトルネックはわかっていない。
婚外子の議論をしてもいい
養子の制度改革も行うべき
社会保障政策は年金/医療/介護/子育て・家族政策がある。
子育て・家族政策が遅れている。
年金の支払額はGDP比でイギリスを超えているが、若い人向けには1/4。

雇用制度
非正規がかわいそうという議論はおかしい
経済界が保険料負担から反対、労働組合が既得権益から反対してきた

インフラの民間委託
政府データのデジタル化を進める
日本政府はバランスシートを縮小して民間にやらせていくべき



2013年4月2日火曜日

【G1サミットまとめ1】第1部全体会 新政権への期待とG1サミットとしての行動

【URL】
http://www.youtube.com/watch?v=ASCRlLcowNo

【登壇者(敬称略)】
安倍晋三(ビデオメッセージ)
内閣総理大臣

内閣官房副長官 参議院議員

グロービス経営大学院学長
グロービス・キャピタル・パートナー 代表パートナー

竹中平蔵(モデレーター)(ホームページは更新されてません)
慶應義塾大学教授
グローバルセキュリティ研究所所長

【内容】
安倍首相のビデオメッセージ
5回目のG1サミットおめでとうございます。かつて自分も参加。挑戦する意欲と実行力にあふれる変革リーダーに期待。志を結集し日本の潜在力を解き放ち世界に貢献しよう。安倍政権の使命はデフレからの脱却、経済を再び成長軌道に乗せ世界の発展に貢献。全国民が成長するという気概を持つことが第一歩。
G1サミットの精神:1批判より提案、2思想から行動へ、3リーダーとしての自覚を醸成

〜セッション開始〜
世耕:去年の時と変わり、体重が10キロ落ちました。野党の非主流派として政治家のどん底から官邸へ。

竹中:内閣官房副長官としてではなく、参議院議員の世耕として思い切った発言を期待します。今セッションでは議論のプラットフォームを作るために、産業競争力会議とダボス会議の話をして日本の立ち位置確認します。まず、安倍政権を世界はどう見ているのか。

:ダボス会議に6回以上参加する中で日本の存在感の低下感じていた。それが、明らかに変わった。マクロ経済を語るにアベノミクス。地政学を語るに中国の台頭、日本が入る。エネルギーを語るに福島。エイジングを語るに日本。日本が議論の中心に。安倍総理が直接ビデオで参加したこと、2大臣が参加したことも大きかった。

竹中:3つフォローアップ。
1)世界経済に対しての見通し、去年は悲観的, cautiousだった。現在は良くなり、cautious optimismに。欧州中銀のドラギ曰く、去年多くのことを決定してヨーロッパの最後の貸し手に成ることを明確にしたFRBがQE3に踏み切り、日本が変わり始めた。実体経済はまだよくない。今年は去年決めたことを実行する年で、実行すればいい結果がくる期待がある。
2)アベノミクスという言葉が世界の首脳が使う市民権を得た言葉になっていた。3本の矢は正しい、実行しろよという期待を感じた。
3)日中のイシューはグローバルイシューだと聞いた。意外な感じがした。
景色を変えよう。日本経済の景色を変えるチャンス。安倍政権運営はso far so good、アルジェリアの対応は大変だったが。ここまでの政権運営をどう見ているか。

世耕:吉田総理以来の返り咲き、前回の反省を踏まえて頑張っている。日本のために安倍政権を1日でも長く安定軌道に乗せようと頑張っている。早めにリスクに対して手を打っていく。アルジェリアの事件は悲惨な事件で、首相の外遊中だったが、政府対応としてはできる限りの対応ができた。他には、北京の大気汚染問題に対する対応をしている。
今後の問題点は党との関係。今は官邸の決断で物事を進めていけている。道路特定財源で少し緊張走ったりしたが、乗り切ってきている。これから党内が一枚岩にならないイシューが出てきたときに、どう整理して国民から見て党がゴタゴタしている印象を持たれずに、党が安倍さんを支えている印象を持ってもらうことが重要。

竹中:政策にはリアクティブ(受動)とプロアクティブ(能動)がある。
デフレを克服できる期待が生まれている中で、それを本物にするためにリトマス試験紙がある。ダボスのときに、IMFのラガルド曰く、リスクの一番高い地域は日本だという。2番目にEU。3本の矢はいいけれども、短期的な財政出動の後に財政再建やるよね、TPPやらない成長戦略はありえないけど、やるよね。ということだと解釈している。TPP、財政再建、やりますよね世耕さん。

世耕:私の番記者さんたちが見てるので注意深く申し上げないといけない(笑)。先ほどの申し上げた党との調整がまさにそのテーマ。
TPPは立場上軽く言えない。選挙中にテレビ番組で言ったらえらい目に遭った。聖域なき関税撤廃である限り交渉参加はしない。という政府公式ステートメントを繰り返します。けれど自民党の中で賛成のグループも反対のグループも立ち上がった。きっちり議論しますが、自民党は最後はまとめます。いつもと違って歯切れが悪く申し訳ない。
財政再建について、民主党に攻め込まれているが、24年度の補正予算では景気を刺激するメッセージを発しつつ、25年度の当初予算では国債の発行額が税収を上回る姿から元の姿に戻し、財政再建やるメッセージは発した。財政再建をどうするか、というのは発言が難しいが、そんなに遅くない時期、近い時期に着手します。

竹中:堀さんにマーケットの要望と期待について。

:経団連と同友会に入っているが、期待感がある。株が25%上がり、円安が他国から批判されているが、リーマンショック前の110円から80円未満になって90円に戻ったところ。イコールフッティングで戦えるように、TPP、CO2、労働規制など6重苦を解消してほしいという声。
歯切れの悪い世耕さんの代わりに言うと、安倍さんの言動見ると安倍さんはTPPやりたいと思ってる。党との関係もそうだが、世論がどう動くかが大事。G1サミットの参加者はほとんどみんなやりたがっている。規制改革を押し進めていく力をもって自分たちが発言していこう。

竹中:例外なき関税撤廃というが、例外があるから交渉する。例外がないから参加しませんなら、例外があるなら参加するということだ。
世銀の規制の質ランキングで、日本は40位だった。小泉改革で40位から28位に。既得権益の抵抗にメディアが乗ってしまった不幸があり、いま47位に。企業がどんどん出て行き、5年で輸出額が30%減。それは間違ってるという声が社会に広がらなければいけない。47位のランキングを5年で20位以内にしようというような骨太の目標立てたらどうか。
東京は都市ランキングで万年4位。ニューヨーク・ロンドン・パリ・東京の順だが、去年ロンドンとニューヨークが入れ替わった。理由はオリンピック。オリンピックは効果あって、東京は高速も新幹線もオリンピックでできた。世界中がオリンピックやりたい。
皆さんには日本の景色を変えるための提案をしていただきたい。例えば羽田のキャパを3倍にして東京駅と新幹線で結ぶ。そういうことができれば本物の3本の矢になる。そういう気概を総理・官邸は持っていても省庁が持っていない。官邸主導でどう変えていくか。

世耕:規制の見直し会議は総論になりがちだが、総論ではなく、一本一本具体的にやっていく。国際先端テストを今度からやって世界に比べてどうなのかということを考え、トップに合わせて実行していく。各省庁をどうするかは難しい。閣議の前にやり、閣議のお膳立てをしていた事務次官会議は民主党時代に廃止されたが、事務次官間の連絡を取るために事務次官連絡会議という形で復活。安倍政権になって、事務次官連絡会議は継続、ただ閣議の後にした。閣議で決まったことを実行してもらう会議にした。官房副長官が主催する形。現状、各省の報告をする形式的な会議になってる。ここをディスカッションの場にしていく。TPPなんかも事務次官会議で議論してもらい、それで閣議決定する。それが省益を変えていくことになる。

竹中:堀さんは安倍政権の方向性をどう感じてますか。

:中曽根大臣曰く、2つやりたかったができないことがあった。憲法と教育。世論を変えるには政治家だけでなく、仲間が必要。例えば薬事のインターネット販売。官邸だけでは変えられない。多くの人が立ち上がってサポートしていくことが必要。批判してもしょうがないので、景色を変えるために発言していこう。抵抗勢力を変えていくにはどうすればいいのかを世論に直接的なメディアを使って訴えかける。こういった場を通じて発信して数十万人数百万人が動いていけば景色が変わる。

竹中マルチステークホルダーの概念が重要。政治が頑張らないと行けないが、企業、個人、NPOなどがマルチで役割を果たさないと世の中は変わらない。この場は世の中に対して影響力を持っている人が多くて、政府の委員会に入る人が多い。政府の委員会に入る人は頑張る人と頑張らない人に分かれる。国の人と仲良くなって気持ちよく帰るだけでやりあなわない人がいる。本当にやろうと思ったら役人と喧嘩しないといけない。役人に嫌われて委員会から外されるのを恐れて何にもしない人がいるけどそれはよくない。私たちは経済がわからない政治家がダメだというが、政治プロセスがわからない経営者はダメ。総理が決断すればいいんだと言うが、政治もそんな簡単にいかない。これから、安倍内閣でこれをやって景色を変えるというのが明確に見えないといけない。

:G1官僚という集まりを始めた。彼らも悩んでいる。彼らが回りやすい方法論考えている。G1サミットの3つの精神で、「次代の」という言葉を外し、どんどん大臣も出てきており、自分らがリーダーである。みんなでそれぞれバックアップする方法論があると良い。例えば、世耕さんが孤軍奮闘していたら、それを助けて動きやすいように。そういったことを自分たちのビジネスのためではなく、日本のためにやりましょう。

世耕:実は、既に皆さんからサポートしてもらう動きは起こっている。ネット選挙運動の解禁はなかなかできなかったが、政治界と経済界のコラボが上手くいってる事例。安倍さんが自民党総裁になった直後に新経連の人の前でネット選挙をやる約束をした。総理に就任した夜の記者会見でも参議院選までにやりますと約束した。総理にここまで言わせてしまった以上どうにかしないといけないと自民党でもう一度動きが出た。党内の抵抗が出てくる、他の党の動きがなかなか歩調が合わないときに岩瀬さんや三木谷さんからメールや電話をもらって何か経済界で助けられることはないですかというので、是非盛り上げてくださいとお願いしたら、この間シンポジウムを開いてもらって、シンポジウム出るなら党の意見をまとめないといけないということで座長一任にしてシンポジウムに出た。民主党や他党もシンポジウム出るならまとめないといけないということで動き出している。これはまさに政治と経済のコラボが上手く働いている。

:ああいう形でやっていくのが重要。

竹中:ネットで民主主義を変えるのは景色を変えるきっかけになる。中身も変わってくるので、積極的にサポートしていきましょう。アベノミクスチャンネルというネットテレビを作ろうと思う。応援もするが、バラマキだけになったら厳しく批判もする。これをやってくれという声もあるが、これはやっちゃいけないということも言う。Veto(拒否権)型の参加も重要。世耕さん、バラマキの関連で国土強靭化どうしますか。

世耕:ネーミングで評判が悪い。確かに前の自民党はバラマキに近いところがあった。流しておけばいつか景気回復するだろうということで、小泉政権前は対GDP比率は6%超えで、世界平均を遥かに超えて高い水準だった。小泉・安倍で減らし、福田でちょっと増え、麻生時のリーマンショック対策で大幅に増やした。民主党になって減り、現在は対GDPで3.2%、そんなに高すぎない。フランスが3.1%。災害が多く国土が急峻な中、フランスと同じ。国土強靭化はこれを3.6%にする。国・地方・民間で負担を分かち合って10数年間で200兆。ここに必要というところに打っていく。国土強靭化というネーミングが悪いのでいいネーミング募集します。

竹中:コンセッション方式。インフラを国が持ちながら運営権を民間に売るとお金を入ってくる。有料道路と上下水道の簿価で100兆円あるのを売却して羽田空港を拡張するとかやればいい。前原さんが法律通したので、引き継いでいけば景色を変えるきっかけになる。どうですか世耕官房副長官殿(インフラの民間運営)

世耕:財政が限られてる以上民間の力を使うしかない。インフラの運営を受けてお金を回していくビジネスモデルがある。テキサスの州道における成功事例がある。日本にはノウハウの蓄積がないのが難しいが積極的に進めていかなければならない。

竹中:これは地方の企業にとってのビジネスチャンスになる。



会場からの質問
後藤ケンコーコム):最高裁で医薬品ネット販売勝訴を勝ち取れました。ありがとうございます。しかし、まだまだ一筋縄でいかない。各都道府県の薬剤師が議員に陳情している。自民党の中で医薬品販売に反対する議連ができる。賛成派の議連ができず、今夏に結論が出そうだが、揺り戻しが起きる可能性がある。そうならないようどうすればよいか。

世耕:私は後藤さんの側で活動してきたが、官房副長官としては言いづらいところがある。官邸としては最高裁判決はストレートに受け止める。法律改正ありきではない。厚生労働省に判決を受けての検討会ができることになった。反対派ばかりが入る検討会ではなく、官邸がバランスを取り人事を管理しいい方向に持っていきたい。


いづか(エートゥーエー):シンガポールに在住3年です。財政的に厳しい中での提案をしたい。シンガポールでは最低賃金がなく、月収2万3万のお手伝いを呼べる。ただし雇うときに税金を払うために、税収アップにもなる。日本にもお手伝いさんの需要があると思う。

世耕:ご提案ありがとうございます。アジアの人材を呼び込んでいく、医療・介護の世界では入ってこられるが、垣根を下げていくのは重要。

:どちらかというと知的労働者、高所得者を招き入れる政策が日本にとって良いと思う。

いづかそういう人を呼ぶ環境に日本はないと思うので、来てくれる人から呼ばないと厳しい。

竹中:成長戦略を考えるに移民政策を避けて通れない。オーストラリアは移民によって経済成長を目指す明示的政策を立てている。アメリカのブッシュインスティチュートのプロジェクトは実質4%成長を目指し、それは移民によって。タブーを作らないで将来の問題を議論したい。2030年には人口が毎年100万人ずつ減っていく。和歌山県の人口と同じ。そういった状況が目の前に来ていることを前提に。


竹中治堅政策研究大学院大学):TPPの問題は定数不均衡問題と密接に関わっている。TPP反対議連には自民党で230人いる。都市圏の国会議員はほとんど入っていない。それ以外の地域がほとんど。人口的に見たら少ないにも関わらず多くの国会議員を送り出している。そこを抜本的に変えないと、TPPもバラマキも変わっていかない。抜本的な選挙制度改革にどう取り組むのか。力強い前向きな意見を。

竹中:この問題に対する政府の答弁は「各党各会派が適切に判断なさる問題」だが、そうではない答弁を。

世耕:想定問答にはそう書いてあります。こないだの参院の定数微修正を担当した一人です。頑張ったのは、単に修正するだけでなく3年後に抜本的に変える付則を入れた。28年の参議院選からは最高裁判決を受けた抜本的な選挙になる。参議院については憲法をいじることくらいやっていいと思う。アメリカの上院のように1県一人ずつという形もあると思う。安倍内閣の反省の一つとして、菅原琢さんの「世論の曲解」という本がある。安倍さんの元で2007年参議院選に自民党は大敗した。自民党は改革が進みすぎて地方の反乱を招いて敗北と結論づけ、福田麻生と続けたが、結局国民の支持を失い野党に転落。実はその選挙をデータ的に分析すれば、改革をやめたことに対して都市部を中心に反発を招き政権から落ちたと言える。それを忘れては行けない。

竹中:それは自民党の中でどういう議論してますか。

世耕:なかなかしてません。こう考えているのは平さん・小泉さん・私あたりの非主流少数派。

:今年のG1サミットで5つの行動宣言をする。1つは一票の格差。参議院が2倍以内、1倍に近づける。ねじれ国会の問題。インターネット選挙。大臣の外遊がしづらいこと。宣言に加わり、輪を広げて政治の根幹の問題を変えていこうという機運がある。

竹中:いいですね。しかし、参議院の格差は1:5。


フェルドマン(モルガン・スタンレーMUFG証券):移民のフェルドマンです。提案。地方活性化の鍵の一つは地方の既にあるアイディアを世界に広げることだが人がいないので進んでいない。医療費を5%削減して、毎年2兆円を捻出する。海外生活は1年間に5万ドルかかるとして、毎年40万人が海外留学できる。海外留学10倍増計画。日本の大学を出る条件として必須で海外留学してこいという改革は如何ですか。

竹中:効率化して5%捻出して大学生ほとんどいける計算になる。

世耕:おもしろいアイディアだと思う。問題は、いい人材を育てても地方に行く場所がない。コマツは小松市(石川県)でやって地方活性化に貢献しようとしている。各企業も分散させることを考えてほしい。

竹中:2030年までに普通の地方の県は人口20%減る。地方活性化は次元が違う話になる。

世耕:潰す公共事業も考えなければならない。


岩瀬ライフネット生命):少子化対策について。短期的な特効薬はないが出生率を上げるためにできることがある。フランスは積極的に行い成功したと聞いている。例えば、駅に保育園があれば変わると思うが、ボトルネックになっているのは何か。新内閣として少子化対策にどう取り組まれ、何がハードルになりそうなのか。

世耕:ここは自民党政権の弱かったところ。今も少し弱い。産業競争力強化の視点で捉えていかなければいけない。女性の社会参加が進めれば女性、世帯の収入が上がり、消費が進んでいく。お題目は言ってきているが、具体的に何がネックなのかは解きほぐしていきます。

:これは来年のテーマの一つにしたい。景色を変えるために思い切った議論をしよう。他国と比べて婚外子の数が違う。いいか悪いかはいろいろな議論があるが、それを多くするというのも思い切って議論していいのでは。

世耕:経済政策についてはタブーに挑戦し、1銭も使わずに成果が出ている。少子化対策でもタブーに挑戦するくらいの気持ちで取り組む。

竹中:アベノミクスで成長戦略外交教育など目配りしてるが、まだ抜けているところがある。地方分権。議論が始まってない。社会保障。社会保障というと日本では年金医療介護になるがこの国で欠けているのは子育て家族政策の政策。年金の支払額はGDP比で日本はイギリスを越えているが、若い人向けでは1/4。もう一つはエネルギー問題が抜けている。


藤沢ソフィアバンク):堕胎中絶数が多い。平成19年度で26万人。データに出てこないものもたくさんある。産めという一方で堕ろしてる人もいる。G1に来れる女性の多くが子供いなかったりする。養子を受けたいが、40すぎて仕事があると養子を受けさせてもらえない。社会的にも厳しい目がある。養子を受ける制度の改革をしていただきたい。

世耕:自分も子供がいないのでそういうことを真剣に考える。アメリカではリタイア後に途上国の子供を養子にとることもある。しかし、前の安倍内閣の失敗は全ていっぺんにやろうとした、ということもある。一斉に指示したら一斉に反撃食らって沈没した。一歩一歩。


國領慶應SFC):雇用制度を話したい。大学という非正規の多い現場にいて、非正規はかわいそうだという動きをやればやるほど格差が広がることを感じる。多様な働き方を認めるべき。雇用の安定、収入の安定を企業に負わせるのは厳しい。

石黒ネットイヤーグループ):自民党で人からコンクリートにという印象がある。ITインフラに対してはアメリカと日本で政府の支援に違いがある。軍事技術を商用化したことによりアメリカのITが進んだ。アメリカは軍事技術を驚くほどすぐに売り渡すが、軍事技術や国家資産を民間に委託する、差別するくらい1企業に渡すようなサポート体制はないのか。日本にそうした動き(国家が開発したIT資産・技術を民間移譲)はあるのか。

MinaCare):ヘルスケアの会社をしている。省庁再編について聞きたい。予防は大事だと言っても厚生労働省・経済産業省・総務省の谷間が埋まらない。

世耕正規非正規にこだわるのはおかしい。その観点から議論を。正規じゃないとかわいそうだから正規に、をやっていてはおかしくなる。基本的には収入がきっちり上がるための施策をやる。

インフラについては、自民党は人からコンクリートではありません。公共事業は人を守るための軸に立っている。人中心。ハードのインフラは整ってるがうまく使えてない。どういう切り口でやっているか。ビッグデータやクラウド化と言われる中で政府のデータのデジタル化。

健康については、健康管理は重要。これをやれば医療費を抑えられる。省庁間の縦割については例えば事務次官会議を本当の省庁間のトップの会議にしていく、ということをやっていく。

:人を活用する方法論を考えるのが重要。積極的に意見を述べて抜擢して政府に入れてサポートして動かしていくのがいいと思う。提言から行動へ。リーダーの自覚を。

竹中:正規非正規の問題に前の安倍内閣のときもやろうとした。反対したのは経済界。全員を保険料が高くなるから反対。あと労働組合も反対。自分たちの既得権益が守れない。マルチステークホルダーで動かしていくことが必要。

政府のもっているものを出すという話では、日本の政府は巨大なバランスシートで持っている。固定資産・金融資産・技術。日本政府のバランスシートはアメリカ連邦政府の5倍、GDP比で10倍の大きさがある。取り込んで離さず、技術開発も投資減税でやるのではなく、霞ヶ関でやる。なんでも霞ヶ関でやろうというのと戦う必要性がある。

省庁の縦割りについては公務員制度改革の話が絡む。これもマルチステークホルダーで解決していく必要がある。意外と自分たちはタブーを作っているのでそこに踏み込んで社会の景色を変えよう。